2015年7月27日月曜日

ドイツ語圏ニュース紹介

安全保障法案に関連した報道はドイツ語圏でもされています。
スイスのチューリッヒを拠点とする日刊新聞Neue Züricher ZeitungのWeb版では、以下のような記事が掲載されています。
本学の大学院生が訳した日本語訳を下記に掲載しますので、ドイツ語がわからない方もぜひご一読ください。

原文はこちら:
http://www.nzz.ch/international/asien-und-pazifik/wenn-demonstrieren-ploetzlich-cool-ist-1.18582545(2015/7/27アクセス)

[ Neue Zürcher Zeitung 東京2015.7.20 = Patrick Zoll ]

日本の街頭抗議行動
デモ行進することが突然“クール”(格好良い)になると

 日本政府は兵力により多くの活動余地を認めているある法律を押し通そうとしている。国民はそれに反対している。最近デモ参加者の中には多くの若者達もいる。

 太鼓が若い女性を鼓舞する。彼女は短い拍子でシュプレヒコールし、群衆はそれにすぐに応える。“我々は戦争法案に反対する”とラップの調子で。シュプレヒコールでかれてしまった彼女の声には大きな怒りが入り交じり、太鼓は益々早くなる。“アベは、辞めろ”と 彼女がマイクで叫ぶと、“アベは、辞めろ”と周り中の大声で反響する。

聞く耳を持たぬ者との対話

 安倍晋三首相の連立政権が新安全保障法を促進するやり方は多くのデモ参加者を街頭に送り込んだ。先週野党の反対にもかかわらず、法案が衆議院で可決され、今は、参議院に送られている。連立政権はその法律を単独で通過させるのに必要な議席を持っている。議会での何日にもわたる議論は妥協とバランスのとれた表現が探られる審議よりむしろ聞く耳を持たぬ者との対話であった。

 “憲法を守れ”とデモ参加者は叫ぶ。数日来、数千人が、しばしば数万人が国会の前にやって来て、囲いによって狭い歩道に押し込まれ、数百人の警察官に取り囲まれる。デモ参加者は憲法が脅かされていると見ている、何故なら、政府は自分たちの法律を憲法の勝手な解釈で裏付けているからである。昨年の夏、政府は、平和憲法は集団的自衛を認めているということを決定した。それに従って政府は、日本自身が直接攻撃されていなくても、日本の自衛隊は同盟国の軍事活動に参加できると解釈している。

 この憲法の新解釈は議論を呼んでいる、というのはかつて政府はそのような活動を常に排除してきたからである。大多数の憲法学者はその新しい解釈を、そしてそれによって提案されている安全保障法を憲法違反と見なしている。それどころか政府によって選ばれた専門家の一人も議会で憲法違反とした。

 “法案を粉砕しよう”とデモで耳を聾するように響く。リーダーは明らかに若く、多くは20代始めである。合間に登場する何人かの野党政治家はとても年取って見える。「これまで若者達はデモを何か年寄りの怖い人間のためのものと思っていた。」と光景を見つめている共産主義の新聞“赤旗”の記者は語った。

殆ど選挙に関心がない

 数週間前からSEALDsという名前で一つのグループが現れた。それは“Students Emergency Action for Liberal Democracy:自由と民主主義のための学生緊急行動”の略語である。「私たちSEALDsはcoolだ。SEALDsを通じて若い人達が政治に関心をもって欲しいと思っている」とグループの英語のツイッターを担当するYuto Vieri Fujitaniは自覚を持って言う。日本では20歳代になるほど投票率が低い。

 フクシマ・ナナコは彼女の仲間の描写にぴったり合っている。21歳で黒いワンピースを着て、それに合う真珠のネックレスとゆらゆら揺れるイヤリングをしている。彼女は外出のためのようなスタイルである。しかし目下のところそのための時間が無いと笑い、そして「しかし、おしゃれをしてデモに行くのは何も悪くない」と言う。その見習い歯科衛生士がSEALDsに加わったのは、彼女の親しい友人が自衛隊に勤務しているからである。「私がそれに抵抗していなかったから、彼が戦場に行かなければならなくなるとしたら、決して私は自分を許せないだろう」と彼女は勇敢に語った。

 彼らはいくらか注目されているにも係わらず、SEALDsは小さなグループである。Fujitaniは、SEALDsは約200人の会員を数え、約20人が活動の中心にいて、彼らは日本の最高の大学で学んでいると言っている。相当数の人達はすでの安倍政権の秘密保護法反対運動に係わっていた。少し前から学生達は学者達の支持も得ている。11,000人の学者が安全保障法に反対する請願書に署名している、何故なら彼らも憲法に違反していると見ているからである。

 「政府の論拠はイデオロギーの堕落である。毎回、安倍と閣僚がしゃべると、その法律が何を可能にし、何を禁止しているのかが益々分からなくなる」と主唱者の一人である政治学者のナカノ・コウイチは語った。

安倍は代償を支払う

 恐らく下がっている世論調査の数値が権威に反抗する学生と反抗的な教授よりはるかに安倍の気に障っている。大ナタで政治を進める安倍のやり方はコンセンサス重視の日本では不適切と受け止められる。彼の内閣に対する賛成は35%の記録的低さに落ちている。およそ回答者の3人に2人がその新安全保障法に反対している。朝日新聞によれば、自民党員はこの間の国民の反対を非常に恐れているので、彼らは最早街頭で法律の宣伝をしないつもりである。党員は街頭でブーイングされるのを恐れている。

(訳:根上真依、保坂千鶴子)

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