2016年5月27日金曜日

【新刊(翻訳)】 『フリーメイソンの歴史と思想』

  この度、フリーメイソンに関する新たな研究所が出版されました。
 
ヘルムート・ラインアルター著『フリーメイソンの歴史と思想―「陰謀論」批判の本格的研究―』三和書籍
 
 著者は、インスブルック大学で近現代史、政治哲学の教授を務め、現在はインスブルックにある、ドイツ語圏唯一のフリーメイソン研究所である「思想史研究所」の所長である、第一線で活躍する研究者です。
 翻訳と解説を担当されているのは、本学の上村敏郎先生と、そして特任教授として本学でもご活躍された増谷英樹先生のお二人です。
 
以下、本書の内容の紹介と目次です。
 
説明
本書は、フリーメイソンの運動が始まったイギリスやフランスの歴史分析から出発しているが、その中心はドイツ語地域のフリーメイソンの分析に当てられている。その理由はフリーメイソン攻撃の陰謀論はとくにドイツにおいて展開していったという歴史があるためだ。本書では、自らフリーメイソンであったフリードリヒ2世(大王)から19世紀における陰謀論の成立についての分析、ナチ時代のフリーメイソンの弾圧にいたるまでが解説されている。
 
目次
序 文 フリーメイソンとは何か?
第1章 成立と歴史的発展
第2章 目的と内部活動、理論と実践
第3章 憲章、組織構造、方針
第4章 フリーメイソン、政治、教会、反メイソン主義
終 章 フリーメイソンの影響史について
 
 
 
 つい怪しげなイメージの付きまといがちなフリーメイソンですが、彼らの真実の姿に迫る、非常に興味深い内容になっているようです。
 
 これを機に、フリーメイソンの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。
 
電子書籍版でも出ています。
詳しくはこちらから

 

 
 
 
 
 
 

【学生記事】オーストリア国立図書館



春学期も、始まって既に1ヶ月半が過ぎましたが皆様いかがお過ごしでしょうか、しゃもじです。5月は新緑が大変心地よい、過ごしやすい季節ですね。ゴールデンウィークは過ぎたけれど、まだまだ色々なところに出かけたくなってしまいます。

 さて今回は、こんなことを書きつつインドアまっしぐらしゃもじの妄想旅行にお付き合いいただきたいと思います。目的地は、オーストリアの首都ウィーンの、オーストリア国立図書館。ウィーンは、私にとって未踏の地ですが、この図書館はいつか必ず行って「鑑賞」してみたい場所なのです。

ヨーロッパには、数百年、はたまた千年以上もの歴史を持つ図書館が各地にあります。今回訪れるオーストリア国立図書館は、もともとは、かつて神聖ローマ帝国皇帝をも務め、ヨーロッパ全土に覇を唱えたハプスブルク家が、王室図書館として使っていたものです。マリア・テレジアの父カール6世の命により、18世紀に建築されました。

注目すべきは、何と言ってもこの豪奢にして壮麗、華麗な内装です。天井のフレスコ画、床の模様、美しく装飾された本棚に整然と並ぶ古書群。写真を見ているだけでも、思わずため息が漏れてしまうほどです。これらの装飾から、この図書館は「世界一美しい図書館」とも謳われています。まさに、建物全体が芸術品と言っても過言ではないでしょう。

また、この図書館の所蔵する資料についても、ここで触れておきたいところです。オーストリア国立図書館に収められている資料は、約20万点を数え、その中にはハプスブルク家が代々に渡り収集してきた資料や、軍人として対トルコ戦争やスペイン継承戦争で多大な功績を残し、その一方で文化保護にも尽力したオーストリアの国民的英雄オイゲン公の15000点にも及ぶコレクションも含まれています。これらは実際に手にとって閲覧することはできませんが、ガラスケースに展示されている中世の写本などは見ることができます。

有史以来から今日までの、永い年月の間、人の世では幾度にわたる戦乱があり、大きな社会の変革もありました。けれど、これらの資料はみな、そうして変わりゆく世の中で守られ続け、受け継がれてきた先人たちの遺産なのです。ここでは中世に記された本や、数百年もの昔に時の覇者がその手で触れて学んだ資料が、静かに息をしています。
 
 ウィーンを訪れた際、ぶらりと立ち寄って、装飾の美しさに圧倒されたり、少しだけ歴史の息吹を感じたり。オーストリアに行かれる際、旅程の中にこんな体験は、いかがでしょうか。

2016年5月23日月曜日

【学生記事】ドイツ語余話

 Hallo, zusammen! 引き続きブログ記事を執筆することになった渡辺です。ネタ切れというわけではありませんが、今年度は色々と、文字通り手を替え品を替えやってみようという方針で書いていくことにしました。このあたり、新メンバーの人たちは何かテーマを決めてやっつけてくれそうです(プレッシャーをかけているわけではありません)。新装開店第一号なので、まずはやわらかい内容から始めてみましょう。ただし『柔らかいファシズム』はとりあげません。あしからず。

 みなさんはドイツ語を発信する際、ついつい日本語の発想に引きずられて不自然な、あるいは直訳したようなドイツ語を使ってしまうことはありませんか?もちろん間違うことはいいことです。それによって「気付き」の体験もできるのですから。ただし先生方も、常に間違いを指摘してくれるわけではありません。少人数クラスで、それまで気付かずに使っていた用法の誤りをはじめて指摘されたこともあります。ここにきて思うのは、やはりネイティブ・スピーカーの真似をしてみるのがかなりに有効だということです。1年間留学すれば上手くなる、と言いたくなる気持も分らないではありません。たしかに留学は上達への近道ですが、ここは一つ、回り道をしてみましょう。どの道を往くのも自由ですが、どの道にも発見というものはあるものです。



 (Blut und Ehre: Geschichte und Gegenwart rechter Gewalt in Deutschland. 
Andrea Röpke/Andreas Speit (Hg.) )

 語学学習における回り道の際たるものは、やはり読書でしょう。完全に受け身になる可能性もあります。ネイティブ・スピーカーの真似をするならドラマや映画があるじゃないか、とコメントされそうですが、今回はともかくも本に焦点を当ててみましょう。
 私がよくやるのは、内容の硬い本と、口語がたくさん出てくる本を併読することです。そして使いたい、役に立ちそうな言い回しなどがあったら、日本語訳とともにカードに書いていく。あるいはSmartphoneに吹き込んでおく。こうなると回り道というより「地道」な作業です。実際に自分から発信するのではなく、理解はできるpassiver Wortschatz (受動語彙)になる部分もありますが、まったく役に立たないわけでもありません。では何を読むべきでしょうか?最初は興味のあるものを読めばいいのです。たとえば私は歴史に興味があるので、始めは120ページほどの、ムッソリーニの伝記を読みました。その後は極右主義の歴史と現在を扱ったBlut und Ehre: Geschichte und Gegenwart rechter Gewalt in Deutschland に挑戦しました。またドイツとは間接的に関連があるだけですが、私はチャールズ・ブコウスキーの作品が好きなので、独訳でそれらの小説を読んでいます。



Aufzeichnungen eines Dirty Old Man. Charles Bukowski

 ただし、作品の性質上、授業で使えないような表現もたくさん出てきます。また作家というのは特異な書き方をする傾向があるので、殊に翻訳では注意も必要です。直訳されたままであったら尚更です。実際に、セリーヌの『なしくずしの死』独訳版にあった表現をドイツ人に使って通じなかった経験もあります。話は戻りますが、そうかといって小説は翻訳ばかり読んでいるわけではありません。

Like me. Jeder Klick zählt. Thomas Feibel

 これは私のSprachpartnerin(余談ながら、言語学習Appで知り合い、現在はメッセンジャーアプリで時折やりとりしています)が13歳の頃、教材として読んでいたものです。青少年はSNSをどのように使っているか、そこにどのような問題があるか。そうしたことが議論になっていたので、この小説を読んでディスカッションをする授業が行われていたそうです。先の極右主義に関する本よりは読みやすく、何よりSNSに関する用語も頻繁に出てくるので、これは一読の価値があります。もちろんこれをもとに、日本の状況と比較して何かドイツ語で書いたり、議論したりすることも可能です。SNSがテーマになっている本を使った授業があったら、ドイツ語で発信する楽しみも増加するのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 そうこうしているうちに、紙数が尽きてきてしまいました。あまり本に熱中していると、今度はニュースを読む時間がなくなるというジレンマに陥ってしまいます。ドイツは多様性があり、そのためにまた問題もあるのだから、文化的、社会的な面も勉強したほうがいい。先ほどのSprachpartnerinにそう言われたことがあります。ドイツ語学科オリジナルサイトのリンク集にもニュースサイトが載っているので、みなさんもそうした面に目を向けてみてください。もちろん、Facebook でそれらのうちどれかを gefällt mir して、ニュースが流れてくるようにしておくのもいいでしょう。

 ちょうど時間となりました。ではまた次回、お会いしましょう。


Yuki Watanabe




 

2016年5月20日金曜日

映画『帰ってきたヒトラー』

『帰ってきたヒトラー』(原題:Er ist wieder da)
監督:デヴィット・ヴェント(David Wendt)

ギャップに笑い、まっすぐな情熱に惹かれ、
正気と狂気の一線を見失う−。


 歴史上<絶対悪>であるヒトラーが現代に蘇り、モノマネ芸人と誤解されて引っ張り出されたテレビの世界で大スターになるという大胆不敵な小説が2012年にドイツで発売。絶賛と避難の爆風をくぐり抜け、国内で200万部を売り上げた。その後世界41ヵ国で翻訳、権威あるタイムズのベストセラーリストでも堂々No.1に輝いた問題小説が、まさかの映画化!
 ドイツではディズニーの大ヒットアニメ『インサイド・ヘッド』を抑えて第1位を獲得した。
 主役を演じるのは、リアリティを追求するために選ばれた無名の実力派舞台俳優。ヒトラーに扮した彼が街に飛び込み、実在の政治家や有名人、果てはネオナチと顔を合わせるというアドリブシーンを盛り込み、センセーショナルな展開と、原作とは違う予測不能な結末は、一大ブームを巻き起こした。
 第二次世界大戦から70年が経ち、全てが変わった現代社会で、あの頃と変わらぬ思想とともに生きる男が繰り出すギャップに笑い、かつて熱狂的に支持されたままの、誰よりも愛国心に富んだまっすぐな情熱に惹かれ、正気と狂気の一線を見失っていく現代の人々の危うさ−。そうきっとスクリーンの前で笑っているあなたも。
 モラルと背徳の狭間ギリギリの危険なコメディ、あなたの<足元>がグラつく。
(公式サイトより)



2014年には日本でも翻訳が出版され話題となり、翻訳者の森内薫さんとマライ・メントラインさんによるトークセッションも日独協会主催で開催された小説の映画化が、ついに日本でも公開されます。
当時のトークセッションのチラシはこちら


2016年6月17日(金)より、TOHOシネマズ・シャンテ他、全国順次ロードショー






2016年5月16日月曜日

映画『ヴィクトリア』


『ヴィクトリア』
監督:ゼバスチャン・ジッパー


全編140分ワンカットの衝撃ー。

ベルリン、夜明け前。



出会い。恋。犯罪。逃亡。

たった一夜で、彼女の人生は一変する。


introduction(公式サイトより)
 2015年のドイツ映画界において最大のセンセーションを巻き起こした
『ヴィクトリア』は、クライム・サスペンスというジャンルの形式を突き
破り、あらゆる観客に未知なるレベルのスリルと臨場感を体感させる衝撃
作である。ドイツのベルリンを舞台に、夜明け前のストリートでめぐり
ったスペイン人の女の子ヴィクトリアと地元の若者4人組が、予測不可能
限状況へと突き進んでいく2時間余りの出来事を、全編ワンカットという
驚異的な手法で描出。視覚効果などによる“見せかけ”のトリックに一切
頼ることなく、スタッフ&キャストがベルリンの街を駆けずり回り、完全
リアルタイムの撮影を成し遂げた映像世界は、まさに奇跡と言うほかはない。
 ベルリン国際映画祭では撮影監督ストゥルラ・ブラント・グロヴレンの
仕事を讃える銀熊(最優秀芸術貢献賞)など3賞を受賞し、ドイツ映画賞
では作品賞、監督賞、主演女優賞、主演男優賞、撮影賞、作曲賞の6部門を
独占。東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門での上映時にも大反響を
呼んだ“破格”の話題作の公開がついに決定した。
関東地区で見ることができる映画館

2016年5月9日月曜日

2016年度学生記者の自己紹介


獨協大学外国語学部ドイツ語学科オリジナルサイトでは、学部生でBlog記事執筆などをお手伝いしてくれる学生記者ボランティアがいました。昨年度まではボランティアということでしたが、本年度からは学生記者として、よりしっかりとお手伝いをしてもらうことになりました。

2016年度ドイツ語学科オリジナルサイトの学生記者は今のところ3名です。
今回は最初ということで、そんな学生記者の皆さんに自己紹介をしてもらいました。3人の学生記者の個性ある自己紹介をお楽しみください。

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獨協大学ドイツ語学科4年の渡辺友樹です。
今年度もこのサイトで学生記者として色々と、というわけにはいかないかもしれませんが、ともかく執筆していくことになりました。
趣味および関心はお酒と外国語、それに20世紀のドイツ史です。
3年のときは主に歴史に焦点を当てた記事を書いてきました。
しかし今年は傾向が変わるかもしれません。そのあたり、どのように変貌するのかも含めて、楽しみにしていただければと
思います。漫談調、真面目調、手を替え品を替え展開していきます。
獨協大学
外国語学部ドイツ語学科4
渡辺友樹


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今年、学生記者を務めさせていただきます、しゃもじと申します。


精神年齢、5歳。座右の銘は、先手必勝。
特技は寝落ち。人に嫌がられる特技は、人の話を聞かないことです、すいません。
ここからは真面目に。
記事は、オーストリアの文化や観光情報、
ドイツ語圏の伝統的な行事について扱ったものになると思います。
そのほか、ドイツ語圏の文学作品の読書感想文もどきも
書けたらなあ、と。
至らない点ばかりではありますが、自分が面白いと思ったもの、ことの魅力を
少しでも皆様にお伝えできるよう、努力していくつもりですので、寛大な目で見守っていただけると幸いです。
1年間、どうかよろしくお願いします。








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Hallo Leute, みなさんはじめまして!2016年度のドイツ語学科オリジナルサイトで学生記者をすることになりました、ドイツ語学科4年のMarktbrücke(マルクトブリュッケ)です(ペンネームですが、分かる人には分かってしまいそう…)。
研究分野は20世紀における政治と芸術の関係性が主で、特に社会における芸術の役割などに興味があります。ただ、私にとって何かを学ぶということは食べたり寝たりすることと同じくらい大切なので、それ以外のテーマや分野もよろこんで知りたがるようにしています。
趣味は、アート全般(聴くのも観るのも描くのも弾くのも)、食べたり飲んだりすること、読書、自然散策、旅行、動物と遊ぶ(遊んでもらう)ことなどです。ドイツに関して言えば、原っぱで寝ていても許されるところや、電車に大型犬がわんさかいるところが好きです。
ブログではお堅いこともゆるめのことも、色々なテーマについて“真面目に・おもしろく!”をモットーに書いていきたいと思うので、ぜひぜひお付き合いいただければと思います。どうぞ、よろしくお願いします!
獨協大学
外国語学部ドイツ語学科4年
Marktbrücke