2015年8月25日火曜日

歴史で学ぶドイツ語・第2回「Hitlers Verbündete」

Hitlers Verbündete

クロアチアと聞いて思い浮かぶのは首都のザグレブ、次に一文字違いでマグレブ(実際の発音はかけ離れていそうですが)。さて私の場合はなぜかアルジェリアにルーツをもつフランス人ラッパーRim’Kの「マグレブ・ユナイテッド」というアルバムを連想してしまいます。人の移動が文字どおりグローバル化する中、音楽の幅もそれに応じて各地で広がってゆくことでしょう。クロアチアの話をしていて、いつの間にかフランスまで来てしまいました。そろそろ国境を越えましょう。第2回「歴史で学ぶドイツ語」のスタートです。

戦争がもたらすものにはなにがあるのでしょうか。勝者の論理・世界分割、トラウマ、基地問題、荒廃、次世代に伝わらなければ風化してしまうのは、もちろん記憶です。あるいは伝わっていても、ナショナリズムの土壌となる場合もなきにしもあらず・・・。今回は第二次世界大戦中、ドイツの傀儡国家(正確にはイタリアも関わっていたのですが)となったクロアチア独立国を取りあげ、戦争のもたらすものの一部を見ていきたいと思います。ここは事実と違うぞWatanabe!と思った方は遠慮なくご指摘ください。

とはいえ、このブログはクロアチアの歴史を専門に扱っているわけではないので、有志の方は『バルカンの歴史:バルカン近現代史の共通教材』や『クロアチアを知るための60章』などを参照してください。バルカンから見たドイツという点で、新たに得るところがあると思います。またZDFでは、„Hitlers Verbündete“というタイトルで、ドイツの同盟国(枢軸国の同盟国と言ってもいいでしょう)が描かれており、ネット動画で観ることができます。ZDFは度々再放送はするのですが、入れ替わりが早いので、再び有志の方はgooglenしてご覧になってください。

1941年にはブルガリア、ユーゴスラヴィア王国が枢軸国に加盟しますが、後者では反対勢力によるクーデターが成功を収めます。その後ユーゴスラヴィア王国はドイツ、イタリア、ハンガリー、ブルガリアにより占領され、そのうちクロアチアだけは枢軸国の傀儡国家として独立しました(ここにはボスニアも含まれます)。さて、そこでたとえば、ファシストが政権を担うとどんなことになるのでしょうか。特に、民族の対立などの土壌がすでに存在していたとしたら?傀儡国家を担ったアンテ・パヴェリッチはそれ以前、イタリアに亡命しており、当地でムッソリーニの支援を受け(伊の指導者はそれによってクロアチア沿岸地域をイタリアに併合することを意図していたわけです)ファシズム組織「ウスタシャ」(Ustascha, KroatischではUstaše)を結成していました。ここで問題となるのはヒトラーの考え方に影響を受けた民族主義です。パヴェリッチは純粋なクロアチア人ということを重視し、人種政策を実行に移しました。ユダヤ人とセルビア人の大量虐殺はまた、ナチスのそれと同じように強制収容所において行われました。クロアチア中部、ヤセノヴァツ強制収容所があった場所には犠牲者のための記念碑が建っています。

ヤセノヴィツ強制収容所跡.犠牲者のためのモニュメント 
Quelle: Wikimedia Commons/Bern Bartsch

他の要因を第二次世界大戦以前に遡って探ることも可能です。しかしこの経験もまた、90年代のクロアチア紛争のきっかけとなったと私は考えます。そこに枢軸国の責任というものを見逃してはいけません。説教めいた書き方になってしまうかも分りませんが、日本もまた、その三国同盟の一員であったということ、アジアにおける戦争責任をどう意識するかということも忘れてはならない問題、あるいは課題です。

クロアチアのファシズムを短くではありますが見てきました。少しでも知識があると、リスニングも何を言っているか見当がつきやすくなるものです。今日はARDの„Nationalsozialismus:Hitlers Verbündete−Hitlers Gegner“を紹介しましょう。ここでは様々な国の戦時中における役割が、音声のみで説明されています。クロアチアの部分は5分もないので、ここの情報をもとに、聞き取りに挑戦してみてはいかがでしょうか。

ARD(ドイツ公共放送連盟):

2015年8月10日月曜日

映画「あの日のように抱きしめて」


『あの日のように抱きしめて』
(原題:Phoenix)
制作年:2014年
監督:クリスティアン・ペッツォルト
上演時間:98分
ドイツ語・日本語字幕

あらすじ(公式サイトより):

アウシュヴィッツから生還した妻と、変貌した妻に気づかない夫。
奇しくも再会を果たしたふたりは、再び愛を取り戻すことができるのか――。


1945年6月ベルリン。元歌手のネリーは顔に大怪我を負いながらも強制収容所から奇跡的に生還し、顔の再建手術を受ける。彼女の願いはピアニストだった夫ジョニーを見つけ出し、幸せだった戦前の日々を取り戻すこと。顔の傷が癒える頃、ついにネリーはジョニーと再会するが、容貌の変わったネリーに夫は気づかない。そして、収容所で亡くなった妻になりすまし、遺産を山分けしようと持ちかける。

「夫は本当に自分を愛していたのか、それとも裏切ったのか――」。その想いに突き動かされ、提案を受け入れ、自分自身の偽物になるネリーだったが・・・。

『東ベルリンからきた女』の監督・主演トリオが描く、第二次大戦後直後の深い葛藤。亡命作曲家クルト・ヴァイルの名曲「スピーク・ロウ」がやさしくささやきかける。

監督は、前作『東ベルリンから来た女』でベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)に輝いたクリスティアン・ペッツォルト。主演に再びニーナ・ホスとロナルト・ツェアフェルトを起用し、愛の真理を問うサスペンスフルな心理劇を作り上げた。削ぎ落とされたセリフと無駄のない演出に、亡命作曲家クルト・ヴァイルの名曲「スピーク・ロウ」が艶やかに映える。ヒッチコックの『めまい』を彷彿とさせる傑作と世界が絶賛した本作。

戦後70年の今、”収容所のその後”を生きる夫婦の愛の行方から、私たちは目を逸らすことができない。


上映館情報:
東京:Bunkamuraル・シネマ 8/15公開
神奈川:シネマ・ジャック&ベティ 順次公開
千葉:千葉劇場 8/22公開

公式サイト:http://anohi-movie.com/

2015年8月6日木曜日

高校生のためのドイツ語入門講座&全国高校生スピーチコンテスト

7月27日から5日間、第19回高校生のためのドイツ語入門講座が開催されました。

北海道などを含め遠くの都道府県からも30名以上のドイツ語に興味のある高校生たちが参加して、ドイツ語を一緒に勉強しました。
ドイツに長期滞在の経験のある方から、高校でドイツ語をやっている方、ドイツ語は全くはじめての方など、参加者各々のドイツ語レベルはバラバラでしたが、ゲームなども交えつつ楽しくドイツ語を勉強できるようになっています。
授業は獨協大学の先生やネイティブの先生、院生たちによる明るい雰囲気で行われました。参加者の中には昨年も参加していて「楽しかったから今年も来ました」という、リピーター参加者もいるほどでした。
最終日には、講座で習った数字を使ってビンゴ大会も開催されました。今年は、各先生方からの特別賞も設けられ、豪華(?)賞品も並びました。

参加者のみなさんに5日間楽しんでドイツ語を学んでいただけたのなら幸いです!
2年生以下の方は、ぜひまた来年も参加してくださいね!3年生のみなさんは、ぜひキャンパスでまたお会いしましょう!
Auf Wiedersehen! Bis nächstes Jahr!




高校生のためのドイツ語入門講座
http://www.dokkyo.ac.jp/d-kouza/d-kouza01_j.html

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また、8月1日土曜日には、第17回全国高校生ドイツ語スピーチコンテストが開催されました。
今年も全国から160名を超える応募があり、その中から予選を勝ち抜いた計26名の高校生が本選でハイレベルなドイツ語を披露してくれました。

第1部は、ポーランド出身で世界的に有名な絵本作家Janoschの絵本からの抜粋です。中にはドイツ語をはじめて数か月という出場者もいましたが、それを感じさせないくらい流暢なドイツ語を披露してくれました。

第2部は、先生と生徒との補習でのやり取りをコミカルに描いた短いスケッチです。出場した7組は、小道具や演出などそれぞれ工夫を凝らして、非常にwitzigな劇を披露してくれました。ところどころ会場からは笑い声が聞こえました。

第3部では、世界平和やバリアフリーの社会についてなど、もしかしたら日本語ですら難しいテーマについてドイツ語の自作スピーチを発表してくれました。スピーチ後は、審査員との質疑応答が行われましたが、みなさんドイツ語で堂々と自分の意見を述べていました。

審査を待っている間は、チェロ、声楽、バレエという組み合わせで、ドイツ語の歌曲が披露されました。この異色のコラボから生み出される美しいハーモニーに、会場は盛大な拍手で包まれました。

その後は、緊張の結果発表です。コンテストなので、もちろん受賞される方もいれば、惜しくも受賞にならなかった方もいます。しかし、出場者全員の誰が受賞してもおかしくないくらい、みなさんのドイツ語レベルは高いものだったと思います。受賞を逃した悔しさのあまり涙する方もいらっしゃいましたが、その悔しさをバネにドイツ語の勉強を続けて、ぜひ来年再チャレンジしてください!

出場者のみなさん、審査員の先生方、運営スタッフの方々、お疲れ様でした!


本選結果は大学HPよりご確認ください。

全国高校生ドイツ語スピーチコンテスト
http://www.dokkyo.ac.jp/d-speech/d-speech01_02_j.html