2015年7月3日金曜日

ドイツ語圏で働く日本人・第一回

ドイツ語圏で働く日本人・第一回
――フォルトゥナデュッセルドルフ・フロント・瀬田元吾さん


 Guten Tag!! この連載では、ドイツ語圏に関する仕事で活躍されている方を紹介します。仕事内容やどのような経緯でその仕事に就いたのか、企業へのアプローチの仕方、ドイツ語の勉強の進め方などをドイツ語圏の様々な分野で働く方に取材していきたいと考えています。学んだドイツ語を活かして働きたいと思っている方の参考になれば幸いです。 

 第一回目はドイツ・デュッセルドルフにあるサッカーチーム「フォルトゥナ・デュッセルドルフ」のフロントとして働く瀬田元吾さんをクローズアップしたいと思います。 

 今回この連載を始めるにあたり日独関係に力を入れて活動されている方を探していたところ、サッカーキングさんが主催する瀬田元吾さんの「海外で働くための三つのヒント」という講演会を見つけたので足を運んでみました。サッカーキングさんを通し講演会の内容を掲載して良いか問い合わせたところ、ごく一部であれば可能というお返事を頂いたので、取材とまではいかないものの、瀬田さんのお話のドイツに関する部分を少しだけ紹介したいと思います。 


◎瀬田元吾さんの仕事 

瀬田さんはドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州にある人口約60万人の街デュッセルドルフのサッカークラブ「フォルトゥナデュッセルドルフ」で日本デスクなどの仕事をされています。2014年にはセタークス有限責任株式会社《独名:SETAGS UG (haftungsbeschränkt)》を設立し、個人としてではなく会社としてフォルトゥナデュッセルドルフと契約を結んでいるそうです。また、いわゆるコンサルティングの仕事だけでなく遠征などのコーディネートや通訳、日本でのサッカースクール事業もされています。さらに、それらの体験をもとに講義や講演を開催したり、メディアにも顔を出され、その活動を広く伝える仕事でも活躍されています。 


◎ドイツ語習得とクラブへのアプローチ 

 瀬田さんの場合、元々サッカー選手を目指して身ひとつでドイツに渡っており、あとからしっかりとしたドイツ語を身につけるという順番だったようです。ドイツに渡りフォルトゥナデュッセルドルフのサテライトチームの選手として所属した後はケルン体育大学に進学されています。しかしケルン体育大学では専攻したかったスポーツマネージメントを専攻できたわけではなく、高齢者スポーツの分野を学んでいたそうです。ドイツ語の専門用語で発表やディスカッションをする毎日は勉強にはなったけれど、キャリア実現に向けて実践的な力をつけるために大学を休学。そこから瀬田さんのフォルトゥナデュッセルドルフというクラブチームへのアプローチが始まります。
 
 デュッセルドルフにはヨーロッパでもかなり大きな日本人街があり、沢山の日本人が住んでいます。そこに目をつけ、さらに自身が選手として所属していたという強みを持つ瀬田さんは日本人コミュニティとクラブチームを結びつけるべく、事業展開の提案と共に履歴書を何度か送ったそうです。選手時代の繋がりから、三通目の履歴書でやっと面接をしてもらえたらしいですが、この時点で五ヶ月ほど経っており、瀬田さんはその間中ずっとクラブのホームページを自主的に日本語に翻訳していたと話されていました。その量なんとルーズリーフ70枚に及び、面接の際に差し出すと熱意が伝わったのか研修生からやらせてもらえることになったそうです。最初は試合日の関係者入り口の受付などから始まったそうですが、今では日本語のクラブ情報フリーペーパー「フォルトゥナ通信」を発行したり、日本人選手を獲得したりなど、瀬田さんにしかできない仕事をされ、クラブの重要な存在として働かれています。 


◎海外で働くために 

 先に述べたとおり、瀬田さんはドイツ語がもとからペラペラでこの仕事に就いたわけではありません。語学力とコミュニケーション能力はもちろんマストですが、ネイティヴほど流暢である必要はなくアイデアやそれを伝える力が何より重要だと話されていました。語学のハンデは自分にしかできないことでカバーし、自分の意志を100%伝える努力をしていくことが、瀬田さんから学べる海外でやっていくためのヒントと言えます。 


◎最後に…「フォルトゥナ通信」 

 実は私はヨーロッパサッカーが大好きで、行く先々でサッカーチームのピンバッジを集めています。昨年の夏、フォルトゥナの試合を見ることはなかったもののデュッセルドルフでのドイツ対アルゼンチンの国際親善試合のため、数日滞在し、街を観光する機会がありました。そこで街の中に小さなファンショップを見つけたのでふらっと立ち寄り、ピンバッジを購入しました。ピンバッジだけのたった数ユーロの買い物でしたがお店のお兄さんは私が日本人だと分かると、君は日本人だろう?と言い、瀬田さんが作っている「フォルトゥナ通信」をくれました。その時、全て日本語で書かれているチーム情報誌があるということに驚いたのを覚えています。また、海外の旅先で、日本語で書かれたものを読むと急にそのクラブが身近に感じられたような気がします。そして、このクラブに関わる日本人が少なからずいるから日本語情報誌が存在するのだろうということがずっと気になっていました。約半年後の今、今回の講演会に足を運び、瀬田さんが製作者だと知り、全てが繋がったような感覚です。私のような観光客にも強い印象を残した「フォルトゥナ通信」は現地在住の日本人だけでなく旅行者からもクラブのファンを増やすきっかけにもなっているのかもしれません。 

GENGO SETA OFFICALBLOG:http://blog.lirionet.jp/gen5setax/
セタークス有限責任株式会社HP:http://setags.jp/index.html
フォルトゥナデュッセルドルフ:http://www.f95.de/home/
サッカーキングHP:http://www.soccer-king.jp/

Mizuho Saito

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