2007年4月15日日曜日

ランドセルって何語?

 毎朝7時半頃、家の前をま新しいランドセルをしょった新1年生の行列が学校に行く姿を大勢見かけます。小さな子供たちが自分の背中よりも大きな鞄を背負う姿を見ながら、ふとランドセルって何語だったけ?と疑問が湧いてきました。
 調べてみると、「ランドセル」とは、オランダ語の「ransel ― ランゼル」に由来しているのが分りました。ランゼルとは、軍隊で使われたリュックサックのことで、日本語では「背嚢(はいのう)」と言われます。現在の日本のランドセルは、明治20年伊藤博文が当時皇太子だった大正天皇に学習院入学の際にお祝いとしてプレゼントした学習用背負い鞄が原型とか。以後、全国のこどもたちの手に行き渡るようになったのが昭和30年代。長らく黒と赤色限定だったのが、今や黄色やオレンジ、青といった色も加わりカラフルになりました。ドイツのランドセルもオランダ語と同じ語源でRanzen(ランツェン)と呼ばれ、学校用ということで特にSchulranzen(シュールランツェン)と言います。
 日独いずれも「背嚢」を出発点としているランドセルですが、そのコンセプトと歴史はやはり違うのでした。

左がドイツのランドセル。右が日本のランドセル。


 まず、日本のランドセル。伊藤博文のオーダーに応えた職人さんの腕が素晴らしかったのでしょう。しっかりと形がきまったボディーについた蓋は一枚の長い皮。その皮を鞄の底に金具で止めると、美しい曲線を描きます。現在では、クラリーノ、豚、牛、馬革と素材に違いがありますが、形自体はこの職人さんの作品から基本的に変わらないようです。
 次にドイツのランドセル。立っている大きな四角の箱です。つい20年ほど前までは、日本の中学生が持つ学生鞄のような横長の革の背負い鞄が一般的でしたが、近年は、ビニール素材が革を押しのけ、ショッキングピンク、真紫、青緑、黄色にオレンジが入り乱れたギラギラした蛍光色のついた箱(代表的メーカーのScout Produkteを覗いてみましょう)になりました。このお世辞にも美しいといえない鞄が定番になったのには理由があります。ドイツは、秋から冬にかけての日照時間が非常に短く、子供たちは年の半分は、お月様がまだ真上に見えるような真っ暗闇の中、朝学校に通うことになります。真冬では、朝9時頃授業中に朝日が昇る。年中霧も発生し、ミストサウナのように粒子が細かい、霧状の雨も車の視界を妨げます。したがって通学時間帯に悪条件が揃うドイツでは、近年のランドセルは「まず車のライトを反射し、目立つこと」が第一条件。ランドセル作りが伝統的な革の鞄から、「子供の安全第一」というコンセプトに移り変わった結果が生み出した形と色だったのです。
 日本のランドセルは100年以上フォルムが変わらずに伝わっている世界で唯一の通学用鞄だそうです。ランドセル工業会は最近この鞄にわざわざ「学習院型ランドセル」という正式名称をつけ、「伝統の継承」を謳っています。もうこれだけ長い時間みんなに愛されてきたランドセルなのですから、今更こんな名前をつけなくてもいいだろうと思われますが、ドイツのように、用途に応じて様々なデザインや素材のものが台頭し、これまでの型
がいずれ消えてなくなるのを警戒してのことでしょうか。
 ランドセルの話題が集められたransel.netの中に、使い終えた日本のランドセルを6000台毎年アフガニスタンとモンゴルに寄付する活動についての報告がありました。6年間ほぼ毎日子供たちに酷使されてもへこたれない究極の日本製鞄 ― ランドセル。日本でのお役目を終えた後も、海を越えて他所の国の子供たちにご奉仕できるのであれば、とりあえずは100年形を崩さずにがんばってきた鞄も本望でしょう。
                                    A. A

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