2016年12月19日月曜日

クリスマスマーケットの季節

ドイツでは今、一年のハイライトとも呼べるシーズンが真っ盛りです。
そう、いよいよクリスマスのシーズンがやってきました!
ドイツにとって、クリスマスはキリスト教圏の国として重要な行事の一つであるとともに、„Die schönste Zeit des Jahres“「一年で最も美しい時」と称される、特別な季節です。

ドイツのクリスマスシーズンは、毎年11月末頃、クリスマスの約4週間前から始まります。
この時からアドベント期間=「待降節」となり、人々はシュトレンやクリスマスクッキーを焼いたり、クリスマスの飾り付けをしたりと、慌ただしく過ごしながら来たるべき聖夜を待ち望むのです。

待降節の間、ドイツ語圏の各地で開かれるのがクリスマスマーケット!
日本でも、近年、横浜や六本木で開催されているので、そこを訪れたことのある方もいらっしゃるのでは。今の時期であれば、ちょっとした規模の町であればどこでもクリスマスマーケットが開かれており、子どもから老人まで多くの人が集まり、賑わいを見せています。


ドレスデンのクリスマスマーケット
https://de.wikipedia.org/wiki/Weihnachtsmarkt


もともとのクリスマスマーケットは、クリスマス前に人々が日用品やクリスマス用品を売買するための市場だったようですが、今ではすっかりお祭りとして認識されている感がありますね。
マーケットの中は、クリスマスツリーとイルミネーションで華やかに飾られています。
その下には、クリスマスらしく飾り付けられた露店がずらりと軒を連ねており、レースや木彫りの人形などの可愛らしい工芸品、冷えた体を温めてくれるグリューワイン、クリスマス仕様にデコレーションされたクッキーやレープクーヘン、熱々の焼き栗などが売られています。そして、人々はおやつを頬張ったり、各屋台を眺めて回ったりして思い思いにクリスマスマーケットを楽しむのです。


ハート形のレープクーヘン
https://en.wikipedia.org/wiki/Christmas_market

季節が冬へと移ってゆき、寒さが厳しさを増すにつれ、ドイツでは日没の時刻がどんどん早まっていきます。そのうえ、天気の悪い日も多くなって、昼間でさえどんよりと薄暗い日が多くなり、どうしても気持ちが塞いでしまいがちになります。

そんな鬱々とした季節に、クリスマスマーケットのイルミネーションのこぼれるような明るい光は、冬の冷え冷えとした冥闇に、暖かな灯火のようであり、そこに人々は安らぎと心の慰安を得ているのでしょう。

マーケットにいる人々の楽しげな表情、はしゃぎまわる子どもたち、そして、足音が聞こえつつあるクリスマスへの期待。

クリスマスマーケットは、厳しい冬の間の人々の楽しみであり、また、暗闇の中にも希望は確かに息づいているということを教えてくれる象徴的な行事なのだと思います。

2016年11月18日金曜日

【学生記事】 (かんたんに)シュトレンつくる

ハロウィンを過ぎると、次第に街中はイルミネーションに彩られ始めます。
そう、次に来たるべきイベントはクリスマス!
11月も半ばを過ぎて、クリスマスの気配が近づくとともに、気分も浮き足立ってきます。

今回のテーマは、ドイツクリスマスの風物詩であるお菓子、シュトレン。
一緒に、簡単に作れるレシピと作り方を、写真付きでお送りいたしますので
どうぞお楽しみに!


1.    シュトレンってなんだ



最近、日本のパン屋やお菓子屋でも見かけるようになったため、シュトレンをご存知の方も多いのではないでしょうか。

シュトレンは、ドライフルーツやナッツ、シナモンなど数種類のスパイスをふんだんに練りこみ、更にバターをたっぷり入れたドイツクリスマスの伝統的な焼き菓子。
14世紀のドレスデンが発祥とされ、粉砂糖のたっぷりかかったその姿は、白いおくるみに包まれた幼子イエスを模していると言われています。
バターや洋酒が使われていて日持ちするため、ドイツではクリスマスの約一か月前に
シュトレンを焼き、薄くスライスして毎日一切れずつ食べながらクリスマスを待つのが習慣となっています。

ちなみに日本では「シュトーレン」と呼ばれることもありますが、ドイツ語の実際の発音に倣うと「シュトレン(Stollen)」が近いそうですよ。

2.シュトレンをつくってみる

 ドイツでもシュトレンはパン屋などで売られているものの、家庭で手作りする人も多いようです。ですが、本格的なシュトレンはイーストを使って、捏ねて発酵させ、更にドライフルーツやオレンジピール、スパイス、バターやナッツを大量に使うという手間も時間も材料もかかるもの。
お菓子作りビギナーにはちょっとハードルが高い代物です。

 ですが、インターネットで検索すると、スパイスを省略したり、ホットケーキミックスを使った簡易版シュトレンのレシピを見つけることができます。
今回作ってみるシュトレンも、イーストではなくベーキングパウダーを使った簡単バージョン。スパイスも入っていないし、ドライフルーツもレーズンだけ。
正統な作り方とは異なっているため、本格派のものとは味・食感の上で違いがあるシュトレンもどきに近いシュトレンなのですが、たっぷり入ったアーモンドの香りが香ばしくて、これはこれで美味しい。

要領の悪い私でも、計量からオーブンに入れるまで30分かからなかったと思います。

ドイツクリスマス気分を手軽に楽しみたい、という方はよろしければお試しください。

それでは参りましょう!

(参照したレシピは、栗原はるみさんのレシピ(haru_mi vol.34冬号掲載)です。)

    準備
まず、計量し、下ごしらえから。
<材料>
くるみ   50g
 レーズン  150g
 ラム酒   大さじ1
砂糖    80g
 バター   30g
A)薄力粉(または強力粉) 100g  
   ベーキングパウダー  小さじ1
  アーモンドパウダー   200g
B)      1
   牛乳    1/4カップ
粉砂糖・グラニュー糖各適量

バターはあらかじめ1センチ角に切り、冷蔵庫で冷やしておきます。
レーズンは、熱湯でさっと洗ったら水気をふき取り、ラム酒をふりかけておきます。
くるみは荒目に刻んでおきましょう。
粉類は合わせて、ボールにふるい入れます。
そして、忘れずにオーブンを160度に予熱。

できたのがこちら~!


左上から反時計回りに、卵&牛乳、くるみ、レーズン、バター、砂糖、粉類

    混ぜる
まず、砂糖を粉の入ったボールにざーっと投入!
全体をふんわりと混ぜます。


次はバター登場。
さらさらになるまで粉とすり合わせましょう。



跡形もなくなりました。

バターが合わさったら、くるみ、レーズンの順に混ぜていき、
最後に卵と牛乳をボールに投入し、生地をひとまとめにします。

この間、手がベタベタでカメラを握れなかったので、写真はなしですご容赦ください。

    成形
  生地が出来上がったので、シュトレンの形に成形します。
  かたまりをボールから、オーブンシートの上に移して、生地を楕円形に平べったく伸ばします。


手を洗ってきたので、写真を撮りました。これがシュトレンの生地です。

伸ばしたら、横から3分の2くらいの位置で折り返し、真ん中だけもこっとさせた
細長い山のような形に整えます。

このとき私は手を汚したくなかったので、伸ばすのも折るのも、すべて手を使わずにゴムべらでペタペタやりました。面倒くさがりの人はまねしてください。
本格シュトレンを作る人には叱られるかもだけど。


できました!

今回は、友人にプレゼントするように2つ作りました。
彼女はレーズンが嫌いなので、レーズンだけ抜きで。
左の茶色単色の塊が友人用です。

   焼成
  さてさて、シュトレン作りも大詰め。オーブンに入れて焼きますよ!
  160度に熱しておいたオーブンに入れたら、約40分焼きます。


   仕上げ
やっとオーブンから出てきました~!!!
でも、まだまだ仕上げ作業が残っています。
オーブンから取り出して、シュトレンが冷めたら、茶こしで粉砂糖を降りかけます。


 本場のは、粉砂糖の層になるまで砂糖をたっぷり振り掛けるのですが
 カロリーが怖いので、今回は控えめ……。
 本来のシュトレンと、どんどんかけ離れていくけど。

完成しました!


薄くスライスしていただきます。

 今回のレシピはシュトレンの簡易版でしたが、もっと手軽にシュトレンを味わいたいのであれば、通販やパン屋、お菓子屋でもゲットできます。
 逆に、超本格派をめざす!という方は、ドイツのレシピサイトを参考に、シュトレン作りに挑んでみては。ざわ・・・ざわ・・・。
(ドイツのレシピ投稿サイトCHEFKOCH.DE)

皆さんも今年は、シュトレンとともに、ドイツ風クリスマスいかがでしょうか。



2016年11月11日金曜日

【学生記事】 Wandernの秋?ドイツと山とちょびっと留学体験記

 みなさんこんにちは、Marktbrückeです。すっかり日が短くなり、空も高くなり、葉も色づき、秋が香る今日この頃ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
 芸術、スポーツ、読書…色々なことが楽しめる季節ですが、私は馬肥ゆる秋に偏重ぎみです(人間も肥えますよね)。そんなわけで、このままじゃいけない!歩こう!と気を引き締めていることもあり、今回のテーマは「歩くこと」に関してです。
 ドイツ語でどこかに行くこと、歩くことを表現しようとするときは、さまざまな表現がありますよね。普通にどこか行くならgehen、徒歩で行くことを強調するならzu Fuß gehen、乗り物ならfahren、飛行機はfliegenなどなど…。ただ基本的にこれらはみな目的地があるのが前提条件。ins Kinoとか、zur Uniとか、nach Deutschlandとか…(ドイツ語の授業を受けたことがある人は、この前置詞の多さ、使い分けにちょっとげんなりしたこともあるのでは?)。しかし、目的地がない時はどうするのか?放浪したいときは?ぶらぶらしたい時は?そんな時のために、ドイツ語には、これらとは別に「wandern」という動詞があるのです。
 このwandern、意味は「ハイキングをする」「さまよい歩く」「場所から場所へと移動する」、などなど。このおおもとにあるのは「決まった目的地を持たずにあっちこっちへ進む」というような感覚です。そしてドイツ人はこのwandernが大好きなのです。日本でハイキングというと、どちらかと言えば行楽シーズンのおじさまおばさま、子供連れの家族、というようなイメージがありますが、ドイツでは老若男女、ちょっとした休みにハイキングに出かける人がたくさんいます。
 しかし、目的地なしにあてもなく歩くことが、なぜそこまで人間を惹きつけるのでしょうか?もっと言ってしまえば、そこにどういった意味があるのでしょう。なんだか一生かけても分かりそうにないテーマですが、ここからちょっとMarktbrückeの留学の思い出話とともにそれについて考えてみたいと思います。
 1年の留学、半年ほど経った秋の始まり、私の気持ちは気温の低下に比例するように落ち込んでいきました。もともとへこみやすい性格に加え、なかなか上達していない(気がする)ドイツ語、どこにも居場所がないような気持ちなどなどあらゆるネガティブな感情に襲われた私は、もはや芋虫!もぞもぞと部屋でパソコンと向き合う寂しい生活を送っておりました。そういう時は、人の善意になんてなかなか気づかず、自分のエネルギーを全て、「ものごとをひたすら悪い方向に考える」ということに費やしてしまいます。いま思えば、笑ってしまうほどバカだなあ〜と思いますが、当時はそんな風に自分を客観視することも難しい気持ちでいたのです。
 しかし、パジャマで部屋にこもってYoutubeにかじりついていた私ですが(どうやら留学中落ち込んだ人はみんなこれをするみたいです)、何日か経つと、驚くべきことに、落ち込んでいることに飽きてきたのです。困った、落ち込むことすら出来なくなったらいよいよ何もすることがない…。この余ったエネルギーをどうしよう?…そうだ、山に登ろう!
 
 

 ということで、思い立ったら即実行!バスに半日ゆられてたどり着いたのは、Baden-Wüttemberg州のFeldberg。標高1493mでドイツでは二番目の高さです。このBaden-Wüttemburg州といえば何といってもSchwarzwald、黒い森ですが、実はゆるやかな山という感じなのですね。心はどれだけ落ち込んでいても、体だけはものすごく丈夫な私は、とりあえずこの山に登ってみることにしてみました。
 
登っている途中の風景です。一面広がる、暗めの森が全てSchwarzwald

 
突然の牛。羊もわんさかいました。
 

ちょっとwandernな感じだぞ…と思いつつ、


頂上です!

 ここで気づいたのですが、頂上というのはハイキングのゴールではなく、ただの中間地点。この後も降りたり登ったり、ハイキングは続くのです。そうか、これがwandernということだろうか?とその時ふと思ったのでした。
 そして、坂を登ったり下ったりする行為そのものに意味はない。でも、その時考えたことには、または何も考えずに登っている時間であっても、必ず何か意味がある!そう考えると、あてもなく、正解かどうか分からなくても歩き続けるというその行為は、なんだか人生に似ているのかもしれません。そして似ているからこそ、人はハイキングに惹かれるのでは…。
 と、哲学的満足感を得た私はこの山登りがきっかけで一人旅にもハマり、旅のトラブルが効果的なドイツ語学習になることにも気づき、だんだん元気を取り戻したのでした。
 さて、話を戻しましょう。秋は本来寒くなってきて、心も少し寂しい季節です。でも、芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋、はたまた食欲の秋まで、人は何か自分から動くことで、逆に楽しみを見つけようとしているのかもしれません。書いているうちに私もまた、山に登りたくなってきました。どこかに行こうかなあ〜とちょっとFernweh(はたまたBergweh?)になったMarktbrückeでした。収穫の秋、みなさんも実りのある毎日を過ごせれば良いですね。それではまた!
 
Marktbrücke
 

2016年10月7日金曜日

映画『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』(原題:Der Staat gegen Fritz Bauer)

監督:Lars Kraume 
(2015年)


 10月15日〜19日まで、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて、ドイツ映画祭「HORIZONTE」が開催され、今年のベルリナーレ(ベルリン映画祭)にも出展された『フクシマ・モナムール』をはじめ、最近のドイツ映画の秀作が上映されます。
 ここでは、その一つである『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』を紹介します。

〜あらすじ〜
戦後12年、上席検事フリッツ・バウアーはなおナチス政権の犯罪者を探り出し、責任を問おうとする。その目的に向けて、型破りで時には違法な手段に訴えることさえある。しかし、ドイツ政府の高官がバウアーの仕事を邪魔し続ける。
(ドイツ文化センターHPより)

 筆者は、偶然ドイツから帰国の飛行機で本作を観る機会に恵まれたのですが、本作は、アイヒマン裁判を扱った『ハンナ・アーレント』(2012年)の前夜とも言える、つまりアイヒマン逮捕までをめぐる作品です。主人公フリッツ・バウアーは、アイヒマンをドイツ人が裁かねばならないという考えから、彼の居所を捜索し、逮捕を試みます。バウアーと彼と対立する人物たちとのやりとりを通じて、戦後の「復興」と「責任」というアンビバレントな感情に揺れるドイツ社会の様子が描かれています。

詳細はこちら:


ドイツ映画祭についてはこちら:

2016年10月3日月曜日

Tag der Deutschen Einheit




10月3日はドイツ統一の日です。

1989年の11月に壁が崩壊し、東西の分断がなくなりました。そして、1990年の今日、10月3日にドイツは現在の形に統一されました。この背景を遡ることは歴史的にも文化的にも大きな意味を持つことですが、本日は2016年のドイツがどのように今日を祝っているかに注目をしたいと思います。


10月3日はドイツでは統一記念日として国民の祝日となっています。また、毎年、このドイツ統一の日を祝う祝賀行事が行われています。この行事はドイツを構成する州で持ち回りで行われ、今年の2016年はザクセン州の州都ドレスデンで行われます。
1990年という遠くない過去から未来へ。今のドイツどういう国なのか、今まさに抱えている問題やその展望、そんな『現在のドイツ』に触れながらドレスデンでは様々なプログラムとともにこの晴れの日を祝っています。今から飛行機を予約することは難しいですが、プログラムを一読してみると、おもしろいかもしれません。
公式ホームページはこちら( https://www.tag-der-deutschen-einheit.sachsen.de/index.html ドイツ語)

ドイツというヨーロッパにありながら、歴史上日本とは切り離して考えることが難しい国。このドイツ統一記念日を機に、ドイツという国をもう一度見つめ直してみてはいかがでしょうか?

2016年7月29日金曜日

Aktivist


Wegner in den 1910er JahrenQuelle:Wikipedia(https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/86/Armintwegner1890s.jpg/380px-Armintwegner1890s.jpg)



 人の一生を変える出来事、Wendepunkt(転機)というのは幸いでもあり災いでもあります。しかしそうした出来事によって信念を持つようになるのなら、それはそれで素晴らしいことではないのでしょうか。たとえその信念によって苦難を強いられることになったとしても。ヒトラーに異を唱えた人物としてまず思い浮かぶのは、やはりSophie Schollかと思います。今回は視点を変えて、ユダヤ人迫害に反対した Armin. T. Wegnerを取り上げてみましょう。

 Armin. T. Wegner(1886-1978) がヒトラーに抗議の手紙を書くまでにはもちろん、契機となる出来事がありました。第一次世界大戦中、Wegnerはドイツ衛生部隊のSanitätsunteroffizier(衛生部下士官とでも訳せるでしょうか)として、同盟国であったオスマン帝国に派遣されます。1916年、Wegnerはアナトリア東部でオスマン帝国によるアルメニア人虐殺を目の当たりにすることになります。写真を撮ることは禁じられていたにもかかわらず、Wegnerはその様子を撮影し(逃亡中に命を落とした人々の姿も、Wegnerのカメラは捉えています)、そしてそのときの一連の記録写真は Armenian National Instituteのサイトに載っています。バイオグラフィーもありますが、関心のある方はウィキペディアの記述も読んでみてください。リンクも充実しています。
やはりこれが転機となったのでしょう。大戦後、Wegnerはパリ講和会議に臨むアメリカのWilson大統領に宛てて、1通の手紙を出しています。アルメニア独立のために尽力するよう求めたのです。思うに、こうした体験が人道活動家としてのルーツとなり、後のヒトラーに対する抗議へとつながったのでしょう。

  „Herr Reichskanzler!“ Wegnerがヒトラーに宛てた、ユダヤ人迫害に抗議する手紙はそのようにして始まります。下書きとも言える „Für Deutschland! Offener Brief an die Führer der erwachten Nation, zu Händen des Herrn Reichskanzlers Adolf Hitler“ は、後の完成版と比較して、やはりWegnerが真実書きたかったことが前面に押し出されているように思われます。実際に出された手紙、 „Die Warnung Sendschreiben an den deutschen Reichskanzler Adolf Hitler“ では削除されているのですが、ユダヤ教の教典タルムードの一節が引用されています。曰く、„Verdamme nicht deinen Nächsten, bevor du in seiner Lage warst.“(Wegner. S.136) 。そしてここから先は完成版も同様ですが、Einstein EhrlichRathenau(Waltherの父) などの名前を挙げ、いかに彼らがドイツに貢献したかを書き連ねます。
                         


                        










  (Rufe in die Welt:
                 Manifeste und Offene Briefe)



 Wegnerが正しかったことを証明するような訴えも、手紙には書かれていました。
„Herr Reichskanzler! Schützen Sie Deutschland, indem Sie die Juden schützen!“ (Wegner. S. 146)
この後、Wegnerは逮捕されるのではありますが、研究報告を読むと、手紙と逮捕の間に関連があったとは必ずしも言えない、と書かれています。

以上引用も踏まえて書いてきましたが、私が思うのは、やはり無関心は罪であるということです。ヒトラーはそうした無関心を計算に入れ、ポーランド侵攻を前に「誰が今日なおアルメニア人虐殺を口にするだろうか?」と発言しています。 暴力行為が行われている中、傍観者でいることは何を意味するのか。Wegnerの文章はそう問いかけているかのように思えてきます。

Yuki Watanabe


今回参考にした資料・HP
Esau, Miriam/Hofmann, Michael(Hg.), Wegner, Armin.(2015) Rufe in die Welt: Manifeste und Offene Briefe. Göttingen: Wallstein Verlag. (Wilson大統領に宛てた „Brief an den Präsidenten der Vereinigten Staaten“ も収録されています)
Armenian National Institute (http://www.armenian-genocide.org/ )
Armin T. WegnerWikipedia (https://de.wikipedia.org/wiki/Armin_T._Wegner )
Benz, Wolfgang.(2016) Aghet und Holocaust. (http://www.bpb.de/geschichte/zeitgeschichte/genozid-an-den-armeniern/218115/aghet-und-holocaust ) (Bundeszentrale für politische Bildung)



2016年7月21日木曜日

討論会「演劇についての新たな考察:劇作家・演出家 岡田利規氏を迎えて」(東京ドイツ文化センター)

(画像はゲーテ・インスティトゥートHPより)

 今年の3月より、ゲーテ・インスティトゥート東京ドイツ文化センターにおいて、「演劇についての新たな考察」という討論会シリーズが開催され、毎月新たにゲストを迎える形で、多方面から劇場や演劇の社会における役割や存在意義、現代の演劇・新たな演劇の形を模索するイベントが開催されています。

 今回のゲストは、日本だけでなく欧州を中心に世界で活躍する演劇ユニット「チェルフィッチュ」の主宰で、劇作家・演出家の岡田利規氏が招かれます。
チェルフィッチュについてはこちら

以下、東京ドイツ文化センターのイベントページより〜
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今回は、演劇ユニット、チェルフィッチュを主宰する劇作家で演出家の岡田利規氏をお招きします。岡田氏の戯曲作品と演出はその独特の言語・身体表現により国内で注目を集めたのち、世界中の劇場やフェスティバルで客演や共同制作を活発に行い、各地で大きな反響を呼んでいます。

 そして今年6月には、ミュンヘンのカンマーシュピーレの俳優と共に、ドイツ語版『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』の初演が行われ、現地でも高い評価を受けました。今回は、岡田氏自身にミュンヘンでの制作を振り返って、そこでの発見や確認、今後も続くカンマーシュピーレでの仕事への抱負などを語っていただきます。加えて、通訳・ドラマトゥルクとして関わった山口真樹子さんにも参加いただき、演出家とは違った視点からミュンヘン公演を振り返っていただきます。

司会は演劇批評家の徳永京子さんです。
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 上で言及されているように、岡田氏の作品『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶(Hot Pepper, Air Conditioner and the Farewell Speech)』はミュンヘン・カンマーシュピーレ劇場(Münchner Kammerspiele)でレパートリー作品として上演され(プレミア:6月24日)、2016/17シーズン以降も上演される予定です。
同劇場での作品紹介ページはこちら

 この他にも、彼の主宰する劇団チェルフィッチュとしても、5月には、今年3月に発表したばかりの新作『部屋に流れる時間の旅』が、海外ツアーとして、上述のミュンヘン・カンマーシュピーレ劇場の他、フランクフルト、ユトレヒト、ブリュッセルで客演されました。
『部屋に流れる時間の旅』
さらに6月には、ブラウンシュヴァイクで開催された国際舞台芸術祭Festival Theaterformenに参加し、こちらでも昨年、日韓共同制作作品として日本で初演された『God Bless Baseball』が上演されています。
『God Bless Baseball』(写真はいずれもチェルフィッチュHPより)

 筆者もベルリン滞在中の2014年に、ベルリンHAU(Hebbel am Ufer)劇場で開催された、フクシマをテーマにした演劇・パフォーマンス・フェスティバル「ジャパン・シンドローム」の一環で、同劇団の福島原発事故に基づいて制作された『現在地』と、当時ドイツで世界初演された『スーパープレニアムソフトWバニラリッチ』を観劇しましたが、彼らの独特な世界観が映し出された演技や作品は、ドイツの方々にも好評でした。

 彼らの上演は基本的に日本語で行われるため、海外公演の際には字幕が添えられており、言葉の面でハンディキャップを負っているのですが、それでも彼らが欧州を中心に活動・活躍できる秘訣を聞ける良い機会ではないでしょうか。
 興味のある方は是非!
詳しい情報はこちら