2015年11月24日火曜日

留学生との交流パーティー

獨協大学のキャンパスを歩いていると、留学生とすれ違うことがよくあると思います。

「獨協の『ド』はドイツの『ド』」に表されるように、獨協大学は、ドイツ語圏との学生交流・学術交流が日本で最も盛んな大学のひとつです。交換協定を交わしている大学数は10校にのぼり、毎年、本学学生の多くがドイツ、オーストリア、そしてスイスの協定校・認定校へ留学をし、また、多くのドイツ語圏からの留学生たちが獨協で勉強やインターンをしています。

先日、そんなドイツ語圏の大学から勉強に来ている留学生とドイツ語学科の日本人学生との懇親会が、本学ドイツ語学科2年の有志により主催されました。今回は、そんな「留学生との懇親会」の主催者のみなさんにお話しをうかがいました。

(ドイツ語学科2年の有志の皆さん)

川原(以下、川):この会はどのような会ですか?
主催者の学生(以下、学):これまで、ドイツ語学科の学生とドイツ語圏からの留学生とが知り合う機会がそれほどなかったので、一度、みんなで触れ合えることができるような会になればと思い、企画しました。

川:参加人数はどれくらいですか?
学:ドイツ語圏からの留学生は14名来ました。日本人学生は入れ替わり立ち代わりでしたが、常時50名程度はいたと思います。

(懇親会での様子)

川:懇親会ではどのようなことが催されましたか?
学:「なにか日本らしいことをしよう」と(有志の)みんなで相談をして、書道や折り紙などをやりました。あとはお菓子などを食べながら楽しくじっくりしゃべることが中心でしたね。最初は盛り上がるか不安でしたが、楽しくできてよかったです。

(留学生と折り紙や習字を楽しんでいる様子)

川:会を開いてみてどうでしたか?
学:ドイツ語圏からの多くの留学生と知り合えたことがよかったです。プライベートでのつながりもできました。国際交流という、日本の学生とドイツ語圏の国の学生との懸け橋となるような良い会だったと思います。

川:また、この様な懇親会などを開く予定はありますか?
学:またやりたいと思います。今回の参加者は1~2年生が主でしたが、次は全体が参加できるような会を開きたいです。

川:ありがとうございました。


ちなみに、これから留学しよう!と思っている学生、学内での国際交流イベントを探している学生に向けた情報が、「国際交流センター」のホームページ上で随時更新されています。

獨協大学・国際交流センター

獨協には、毎年たくさんの留学生が来ているので、キャンパス内でも、友達を作る機会は見逃さないようにしましょう。申し込みが必要な定員制イベントは、人気があり、比較的早く埋まってしまうので、頻繁にチェックしておきましょう!!

記者:川原宏友(大学院博士前期課程2年)

2015年11月11日水曜日

歴史で学ぶドイツ語・第4回「歴史に埋もれてほしくない言語」

 Internetseite, googlen, einloggen, facebooken oder twittern…今やコンピューター用語で英語由来のものを見かけない日はないと言っていいくらいの勢いです。ドイツ統一(1871年の統一です)あたりでしたでしょうか、押し寄せる外来語に対して言語浄化運動が政治的に利用されたことがありましたが、現在Anglizismenを避けているのは少数派なのでしょう。では少数民族の言語は、今や顧みる必要のない段階に来ているのでしょうか?100、200年後には日本語が消滅しつつある言語になっていると仮定して、さて現在消えつつある言語のことを考えると、なにか文化の貧困のようなものを感じます。
 Die Welt in Weiß und Schwarz? Nein, danke.

 とはいえ、世界共通語としての英語を否定しているわけではありません。明日アルメニアに行けと言われたら、やはり英語に頼ることになるでしょうし、戦地を取材するジャーナリストにとっても、グローバルな言語を話せる通訳の存在は貴重でありましょう。そしてビジネスの世界において欠かせないツールであることは言を俟ちません。言うは易し、かもしれませんが、問題に対する答えはシンプルなものです。つまり、共生していけばいいのです。今回はそこで、ドイツにおける少数言語、ソルブ語をとりあげてみましょう。

 『事典 世界のことば141』によれば、ザクセン州のほうでは上ソルブ語(Obersorbisch、話者数は約15000-20000人)、ブランデンブルク州のあたりでは下ソルブ語(Niedersorbisch、話者数は5000人以下)が使用されています。但しあとで触れるソルブ語の教材では、前者が約40000人、後者がおよそ15000人とされています(教材の奥付では2012年出版となっており、事典が出てから3年経過しています)。使用されているといっても、皆ドイツ語とのバイリンガルです。こうした状況を見ると、アイヌ語と日本語の共生は危機的と言わなければならないのかもしれません。アイヌ語で思い出しましたが、北海道の地名でラ行が冒頭に来るものはアイヌ語に由来している、となにかの本で読んだかラジオで耳にしたことがあります。実はドイツにも同じようなケースが見てとれます。„Obersorbisch im Selbststudium“(von Jana Šołćina, Edward Wornar. Bautzen, Domowina-Verlag, 2012)のEinleitung(S.8)からそのあたりを引用してみましょう。

„Im frühen Mittelalter reichte das slawische Siedlungsgebiet bis zur Ostsee im Norden und bis zum Main im Süden. Belege für die ehemals slawische Besiedlung sind z.B. Ortsnamen wie Rostock(slawisch roz−tok− ‚Auseinanderfließen‛)oder Leipzig(slawisch lipsk−‚ abgeleitet von lipa ‚die Linde‛). 

 しかしソルブ語は殊に第二次世界大戦後、die Lausitzの工業化、集団農場(コルホーズ?)、非ソルブ人の移住などによって一時は衰退の憂き目を見ました。その一方で、DDRの時代にはソルブ語によるラジオ番組も放送されていました。Obersorbisch、Niedersorbischどちらの放送なのかは分りませんが、bpb(連邦政治教育センター)にある„Regionales Hörfunkprogramm der DDR: Erziehung zum DDR-Staatsbewusstsein“という記事に詳しく書かれています(Regionale Sprachtraditionen: Sprache als Element zur Identifikationから下)。ただしこれは、SEDの反ファシズム神話形成に役立ったため、という政治的意図も背後にあったようです。ソルブ語はナチスの時代に抑圧されていました。
 現在はどうでしょうか。現在は純粋にソルブ語保護のため、やはり当の言語による放送があります。またrbb(ベルリン・ブランデンブルク放送)はSorbisches Programmという枠を設けており、少数言語・地方言語保護の精神が見てとれます。ソルブ語とドイツ語を併記しているFacebookのページなどもあり、これなどは学習者にとっても、ソルブ人とその文化を知りたい人にとってもうってつけではないでしょうか。その他Language Diversityという非営利団体は少数言語・地方言語保護に積極的で、将来は必ずしもWeiß und Schwarzではないようです。

 「実用性がない」という理由でそれらの言語を避けたくなる気持ちも分らないではありません。外国語学習には時間と労力がいりますし、上ソルブ語などはロシア語に似て(同じスラブ語派なので当然ですが)格変化も複雑です。しかし学ぶ時間はなくても、言語を消滅の危機から救う活動はできます。

 まずは関心を持つことから始めてみませんか?

 na zasowidźenje!/Auf Wiedersehen!

(上ソルブ語はチェコ語に近いそうですが、とりあえずロシア語ではДо свиданияです。なんとなく似てますね)

Yuki Watanabe

http://www.bpb.de/(連邦政治教育センター)
http://www.rbb-online.de/radio/sorbisches_programm/sorbisches_programm.html(ベルリン・ブランデンブルク放送内のソルブ語番組)
http://www.serbja.de/index.html(ソルブ語に関する情報など)
https://www.facebook.com/MDRSerbja(Obersorbisch/Deutsch)
http://language-diversity.eu/(Language Diversity。9か国語対応)
http://www.frpac.or.jp/((公財)アイヌ文化振興・研究推進機構)

Being Faust



悪魔メフィストがささやく
「ファウスト博士、おまえはなにを選ぶ? 富と名声か、
それとも愛と自由か?」

BEING FAUST ― ENTER MEPHIST

Being Faust – Enter Mephisto は、ゲーテの『ファウスト』を題材に開発された、オンラインやSNSの要素も交えた参加型の遊戯体験。

ある決まった場所と決まった時間に集合した人々が、それぞれ若きファウストの役になりきって参加する。スマートフォンを片手に、参加者はメフィストが甘い言葉で語るバーチャルな「価値」や「理想」=引用文を購入してゆく。ログインによって、ファウストとメフィストの契約が成立、誘惑のゲームの始まりだ。参加者はいったいどこまでリスクを冒すつもりだろうか。成功や美は「購入」することができるのだろうか?平凡だけれども穏やかな日常に戻る道があるのか、それとも真実の愛と友情を手にすることができるのだろうか?

ファウストとメフィストがもし、このデジタル社会で出会っていたならどうなるのか? ゲーテ・インスティトゥート韓国とゲーム開発会社のNOLGONGが共同で開発したこの新しいプロジェクトの出発点となったのが、この質問だ。だが普遍的な問いかけはつねに変わらない。「人生において大切なものとは何か。自分の価値基準とはどのようにして決まるのか。成功の代償として何を支払うのだろうか?」

この作品は、ニコラス・シュテーマン演出の『ファウスト』でドラマトゥルクを務めたベンヤミン・フォン・ブロムベルクが、『ファウスト』を現代のデジタル社会に置き換えて解釈して作ったもの。2013年に開発が始まり、2014年秋には韓国のソウル図書館で発表された。

このゲームのヴァーチャルかつフィジカルな要素が、自分自身と周囲のデジタル世界の関わり方について思いをめぐらし、他の参加者との交流を通じて自らを発見し、ひいては『ファウスト』の原作を手に取るきっかけとなるだろう。このゲームは年齢性別問わず誰でも気軽に参加できるもので、『ファウスト』の知識がある人はもちろん、本を読んだことがなくても舞台を見たことがなくても、十分に楽しむことができる。

企画・制作 ゲーテ・インスティトゥート韓国×NOLGONG

ゲーテ・インスティトゥート催し物カレンダーより)


スケジュール:
11月19日(木)17:00~
11月20日(金)17:00~
11月21日(土)12:00~/16:00~
11月22日(日)12:00~/16:00~
※上映時間は1時間30分ほどです。

場所:
東京芸術劇場 シアターイースト



チケット購入:
チケットの購入に関しては下記のサイトをご覧ください。

東京芸術劇場:http://www.geigeki.jp/performance/theater106/106-1/
Being Faust公式サイト:http://www.goethe.de/ins/kr/seo/prj/fau/jaindex.htm

2015年11月4日水曜日

オーストリアから広がる日本文化-Wegbereiterin von Katzen-Café in Österreich-


オーストリアから広がる日本文化
-Wegbereiterin von Katzen-Café in Österreich-
石光貴子さん

 ソフトパワーという概念を改めて感じさせられるときがあります。先日もZDFの„Zickenalarm!!“という番組を観ていたら、14歳の少女がコスプレをしてゲームショウ(もちろんドイツの話です)に行き、そしてMangaを買うというシーンがありました。続いて日本語教室で言語を学ぶという場面・・・。またMacmillan English Dictionaryでは「盆栽」がイラストつきで説明されています。海外では俳句と同様、愛好家も多いとか。無形のものとしては、阿波踊りが「誰でも受け入れる寛容の精神」を象徴するものだとして、あるフランス人が本国で実施したというエピソードもあります。すべての日本文化が手放しで歓迎されるわけではありませんが、やはり文化という言葉には交流の二文字が似合います。
 今回はそんな日本発祥の文化、「猫カフェ」をオーストリアのみならず、ヨーロッパ、アメリカ、カナダにまで広めてしまった„Café Neko“店主、石光貴子さんに話を伺いました。

渡辺:„ Café Neko“はどのような店で、石光さんは具体的にはどのようなことを担当されるのでしょうか。

石光:ごく普通のカフェに猫が5匹歩き回っているという店です。私はオーナーで、清掃、調理、皿洗い、税務署への申告などすべて自分で毎日働いて、お手伝いとして6名パートタイマーをお願いしていますが、彼女たちは主にサービスを担当しています。

渡辺:なぜオーストリアに、引いてはウィーンに開店しようと思ったのでしょうか。

石光:オーストリア在住25年以上です。オーストリア人と結婚して2児をもうけたのですが、子供たちが2・5歳の時に夫が急死。当時専業主婦だった私は途方にくれましたが、オーストリアの福祉制度のおかげで生き延びることができました。子供たちが大きくなって(大学生、下も大学入学資格を取れました)、ずっと、オーストリアに何か恩返しをしなければと考えていましたので、職業コンサルタントに相談して、知られていない日本の文化をご紹介することなら私にもできるし、オーストリアの文化と経済のためになる、という観点から、最初の一歩として猫カフェをプロデュースすることにしました。次はクラゲの水槽をおいたバーです。日本酒も出します。工事始めました。 

渡辺:開店はオーストリア初の試みということで、やはり日本とオーストリアでは文化も法律も異なり、色々開店にこぎつけるまで苦労があったと思います。そのあたりのお話をお聞かせください。

石光:まずカフェ業者組合に行って、私の計画している店はカフェの範疇に入るのかどうか確認。市役所の無料起業相談日にアイデアをプレゼンテーション。それから4年かけて各担当課とこまごました交渉。前例がないので、時間がかかりました。私は動物飼育者の資格を取得するため学校にも通いました。

渡辺:お客さんの反応はいかがでしょうか。„Alles über Katzen“というサイトがあり、またドイツ語の辞書を出版しているLangenscheidtも„Langenscheidt Katze-Deutsch/Deutsch-Katze: Wie sag ich's meiner Katze?“という本を出しています。どちらもドイツで、オーストリアとはちがいますが、やはり猫好きな人間というのは世界中どこにでもいると思います。

石光:反響はすごかったです。開店が2012年5月でしたが、BBCでもすぐ放映されたそうです。その夏にはチリ、インド、ロシア、オーストラリア、USA、その他の国から「自宅で新聞(あるいは雑誌・ラジオ・TV)で知って、すぐ見に来た」という人が押し寄せ、てんてこ舞いでした。カナダの役所からコンタクトもあり、カナダでも猫カフェを営業できるように法律を変更したいのでオブザーバーとしてプロジェクトに参加してほしい(こちらはウィーンの役所担当官達の連絡先を渡しておきました)という話もあり。2012年にはもうミュンヒェンにも猫カフェがオープン、今ではロンドン、パリ、ブダペスト、ケルン、ベルリン、ニース、NY、スペイン、雨後の竹の子状態で開店しています。ポルトガルからは、法律をつくらなければならないから、ヨーロッパ各国の関連法を調べています。協力してください、という連絡がきましたし、いろいろな国の、猫カフェ起業を計画している人たちからアドバイスを求める連絡がありました。今ではいくつかのガイドブックにも掲載されています。

渡辺:視点を広げて、ウィーンないしはオーストリア全体の反応という点ではいかがでしょうか。

石光:開店前は賛否両論で、ものすごい騒ぎになり(感情的になってもう泥かけ試合という感じ)、市長に抗議のメールを出した人もいましたし、私にもいくつか脅迫メールなど、来ていましたが、開店してしばらくたったら、別に悪いものではないということをわかってもらえた様子で、今ではポジティブな意見しかききませんねー。あれは面白かった!

渡辺:私は子供の頃に猫を飼っていて、今もどちらかといえば猫派(犬派に対しては)です。石光さんの猫に対する愛着は、どこに端を発しているのでしょうか。

石光:動物はなんでも好きです。犬、小鳥、うさぎ、亀、金魚、ハリネズミ、猫を飼ったことがあります。カフェで働く動物に猫が一番適しているというだけです。いやなことがあってもエレガントにいやだと言える(乱暴なお客がいたら手の届かないような高いところに登ったり、他の部屋に行ってしまえばOK。ひっかいたりかみついたりしても犬のように大した傷にならない)ところを重要視しています。



渡辺:„ Café Neko“ではどのような種類の猫がお客さんを迎えてくれるのですか?

石光:ウィーン動物協会に当時いた猫700匹から、完全室内飼いと不特定多数の人間に対してストレスを感じない猫を厳選してもらいました。雑種3匹とメインクーン2匹です。


渡辺:海外で働くことについて、利点、不便に思うことなど意見をお聞かせください。

石光:私はウィーンと日本しか知らないわけですが、両方のことを知っていることを武器に、また、「両国をつなぎ、相互理解を深めることのお手伝い」、これが私の役目だと思って仕事を選んできました。最初はJTB、その後政府代表部で、オーストリアにいる日本人をヘルプしてきましたが、今回はオーストリア人にもっと日本のことをしってほしい、とサイトを変えたところです。不便に思うことは強みに転換すればいいだけです。

渡辺:獨協ではオーストリアに留学する学生もおり、また卒業後にウィーンの大学に入学した人もいます。そうした学生たちにメッセージをお願いします。

石光:私は高校の生物の授業で、遺伝子の話をきいたとき、先生がミックスしたほうがミュータントが発生する率が高く、新しい環境に順応しやすいとおっしゃたことで、考えさせられました。情報や運送の技術の進歩に伴って、世界は狭くなっていきますよね。何百年か何千年後には地球外生物とのコンタクトもあるでしょう。そんな日本とかオーストリアとかではなくて、地球、その他の惑星、というスケールが常識になる時代が必ず来ます。私はその時のために、準備として、最低2人ハイブリッドの子供を生もう、とその時決心したのです。日本人と他の国のハイブリッドを(主に写真を見た程度ですが)どんな様子か調べて、私にはゲルマン・日本の混血が一番よさそうに思えたので、オーストリア人と結婚しました。・・・というのは半分うそです。その話はすぐ忘れていたのですが、偶然オーストリア人と結婚してしまって、子供が2人生まれて、ずいぶんあとになって高校時代の決心を思い出しました。無意識に残っていたのだと思いますが。

ということでみなさんもグローバルな意識をお持ちになって頑張ってくださいね。ウィーンで困ったことがあったら気軽に相談してください。

以上でございます。

渡辺:ありがとうございました。


(Interviewer:渡辺友樹 ドイツ語学科3年)

Café Neko: http://www.cafeneko.at/
Facebook: https://www.facebook.com/Caf%C3%A9-Neko-451277494889818/