みなさんこんにちは、Marktbrückeです。すっかり日が短くなり、空も高くなり、葉も色づき、秋が香る今日この頃ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
芸術、スポーツ、読書…色々なことが楽しめる季節ですが、私は馬肥ゆる秋に偏重ぎみです(人間も肥えますよね)。そんなわけで、このままじゃいけない!歩こう!と気を引き締めていることもあり、今回のテーマは「歩くこと」に関してです。
ドイツ語でどこかに行くこと、歩くことを表現しようとするときは、さまざまな表現がありますよね。普通にどこか行くならgehen、徒歩で行くことを強調するならzu Fuß gehen、乗り物ならfahren、飛行機はfliegenなどなど…。ただ基本的にこれらはみな目的地があるのが前提条件。ins Kinoとか、zur Uniとか、nach Deutschlandとか…(ドイツ語の授業を受けたことがある人は、この前置詞の多さ、使い分けにちょっとげんなりしたこともあるのでは?)。しかし、目的地がない時はどうするのか?放浪したいときは?ぶらぶらしたい時は?そんな時のために、ドイツ語には、これらとは別に「wandern」という動詞があるのです。
このwandern、意味は「ハイキングをする」「さまよい歩く」「場所から場所へと移動する」、などなど。このおおもとにあるのは「決まった目的地を持たずにあっちこっちへ進む」というような感覚です。そしてドイツ人はこのwandernが大好きなのです。日本でハイキングというと、どちらかと言えば行楽シーズンのおじさまおばさま、子供連れの家族、というようなイメージがありますが、ドイツでは老若男女、ちょっとした休みにハイキングに出かける人がたくさんいます。
しかし、目的地なしにあてもなく歩くことが、なぜそこまで人間を惹きつけるのでしょうか?もっと言ってしまえば、そこにどういった意味があるのでしょう。なんだか一生かけても分かりそうにないテーマですが、ここからちょっとMarktbrückeの留学の思い出話とともにそれについて考えてみたいと思います。
1年の留学、半年ほど経った秋の始まり、私の気持ちは気温の低下に比例するように落ち込んでいきました。もともとへこみやすい性格に加え、なかなか上達していない(気がする)ドイツ語、どこにも居場所がないような気持ちなどなどあらゆるネガティブな感情に襲われた私は、もはや芋虫!もぞもぞと部屋でパソコンと向き合う寂しい生活を送っておりました。そういう時は、人の善意になんてなかなか気づかず、自分のエネルギーを全て、「ものごとをひたすら悪い方向に考える」ということに費やしてしまいます。いま思えば、笑ってしまうほどバカだなあ〜と思いますが、当時はそんな風に自分を客観視することも難しい気持ちでいたのです。
しかし、パジャマで部屋にこもってYoutubeにかじりついていた私ですが(どうやら留学中落ち込んだ人はみんなこれをするみたいです)、何日か経つと、驚くべきことに、落ち込んでいることに飽きてきたのです。困った、落ち込むことすら出来なくなったらいよいよ何もすることがない…。この余ったエネルギーをどうしよう?…そうだ、山に登ろう!
ということで、思い立ったら即実行!バスに半日ゆられてたどり着いたのは、Baden-Wüttemberg州のFeldberg。標高1493mでドイツでは二番目の高さです。このBaden-Wüttemburg州といえば何といってもSchwarzwald、黒い森ですが、実はゆるやかな山という感じなのですね。心はどれだけ落ち込んでいても、体だけはものすごく丈夫な私は、とりあえずこの山に登ってみることにしてみました。
登っている途中の風景です。一面広がる、暗めの森が全てSchwarzwald!
突然の牛。羊もわんさかいました。
ちょっとwandernな感じだぞ…と思いつつ、
頂上です!
ここで気づいたのですが、頂上というのはハイキングのゴールではなく、ただの中間地点。この後も降りたり登ったり、ハイキングは続くのです。そうか、これがwandernということだろうか?とその時ふと思ったのでした。
そして、坂を登ったり下ったりする行為そのものに意味はない。でも、その時考えたことには、または何も考えずに登っている時間であっても、必ず何か意味がある!そう考えると、あてもなく、正解かどうか分からなくても歩き続けるというその行為は、なんだか人生に似ているのかもしれません。そして似ているからこそ、人はハイキングに惹かれるのでは…。
と、哲学的満足感を得た私はこの山登りがきっかけで一人旅にもハマり、旅のトラブルが効果的なドイツ語学習になることにも気づき、だんだん元気を取り戻したのでした。
さて、話を戻しましょう。秋は本来寒くなってきて、心も少し寂しい季節です。でも、芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋、はたまた食欲の秋まで、人は何か自分から動くことで、逆に楽しみを見つけようとしているのかもしれません。書いているうちに私もまた、山に登りたくなってきました。どこかに行こうかなあ〜とちょっとFernweh(はたまたBergweh?)になったMarktbrückeでした。収穫の秋、みなさんも実りのある毎日を過ごせれば良いですね。それではまた!
Marktbrücke
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