Quelle: Wikimedia Commons/Harald Hoffmann
伝説や逸話というものは、とかく独り歩きしやすいものです。ではなぜそのような結果になるのでしょうか?一方には出版という形で、また一方には映像やラジオを通じて、ということが考えられます。そして事実を意図的に歪めるものが、いわずと知れたプロパガンダというものです。そんな昔のプロパガンダは全部分かっているから、今更書く必要もないだろう。あるいはそうかも分りません。しかし政治宣伝が巧妙に利用されたらどんなことになるか、そうした歴史を今一度見直してみるのも無駄ではないでしょう。
BAB 555 (Bundesautobahn) は Köln−Bonn間を結ぶドイツ初のアウトバーンです。完成したのは1932年8月6日、そしてヒトラーが政権を握ることになるのが1933年です。計画では、アウトバーン建設によって、多くの雇用が生まれ、そのために掘削機の投入を禁止することになっていました。しかし定説では、「ヒトラーによって」アウトバーン建設が実行に移され、失業者が大幅に減少したことになっています。これらはテレビなどでも観ることのできる情報です。それに対して真説であるのは、BAB 555 は当時の Köln市長、Konrad Adenauer によって計画され、建設が進められたということです。しかしなぜ、そうした真説は伝わりにくくなってしまったのでしょうか?ここに巧みな情報戦略が紛れ込んでしまったのは、陳腐な言い回しかもしれませんが、歴史の悲劇なのでしょう。ヒトラーは実際、このアウトバーンを政治的に利用できると考えていました。そこで彼は、1933年9月、Frankfurt am Mainにおいて「初のアウトバーン」建設工事の鍬入れを行いました(道路はDarmstadt にまで及びます)。それ以前、ヒトラーは„Adenauer−Autobahn“を国道に格下げし、最初にアウトバーンをつくった人間としての名声を得ることに成功したわけです。言い換えれば、雇用創出に効果のあるアウトバーン建設を、自分の計画であったと主張しているようなものです。
話がややこしくなってしまいましたが、私の読み解くところでは、まずアデナウアーの手によるBAB 555 が国道に格下げされました。そしてヒトラーが「初の」という形容詞を付け、大々的にアウトバーン建設を推進したために、今の定説がある。私自身はそのように読みました。
私たちがここから読み取れることはなんでしょうか?ドイツで「ヒトラーは最初のアウトバーン建設とは関係ない」といった記事が書かれているということは、関係があると考えている人もいるということです(私もそうだったのですが)。メディアをプロパガンダ目的に利用されたということは、規制もあったということ。つまり問題になってくるのは、報道の自由です。独裁者のいる国はたしかに激減しました。ただしメディア規制はいつ、どのように行われるか分りません。ですから真実を追求するジャーナリストの存在は、将来も機械にとってかわられることはないと思うのです。
Yuki Watanabe
追記:今回のアウトバーンに関する真実は、ZDFの„Geheimnis der
Weimarer Republik 1929-1933: Der Weg in der Abgrund“ で知りました。興味のある方は動画サイトなどでも検索してみてください。なお、このDoku はシリーズになっており、該当部分は Folge 3 です。
今回参考にした記事:
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