Guten Tag!
月に1回,放送では児玉清さんがドイツの本を紹介してくれます。5月は,ダニエル・ケールマンの『世界をはかる』でした。この小説は2005年に発表されるとベストセラーとなり,しばらくトップの座に居続けました。(もっとも,ドイツ人は熱するのに時間がかかり,冷めるのもゆっくりなので,この現象は特にめずらしいことではありませんが。)実は2006年の世界ベストセラー・ランキングでは,『ダヴィンチ・コード』や『ハリー・ポッターと謎のプリンス』よりも売れて第2位だったとのこと(三修社プレスリリースより)。翻訳も世界で40ヵ国以上で出版される予定なのです。私もとても気に入った小説ですので,今回はこの本についてふれたいと思います。ドイツ語小説の伝統として,プロット(話の筋)で読ませる以上に,語りのワザで読者を魅了する作品が評価されてきました。『世界をはかる』も,ガウスとフンボルトの自然科学者会議での出会いが出来事といえば出来事で,後はやはり語りがすべてと言っても過言ではありません。
ケールマンの語りは,たとえば近年話題になったゼーバルトの『アウステルリッツ』(2001年刊。邦訳:鈴木仁子訳,白水社,2003年)の関係代名詞やら従属の接続詞が錯綜する,記憶のゆらぎやねじれをたどり直すような文体とは異なって,ずっとシンプルです。ドイツ語学科の2年生ならば,単語の意味が分かれば物語を追うことはできるでしょう。
『世界をはかる』の面白さは,語り手の一筋縄ではいかないユーモアが生み出す独特の言語空間にあるように思います。特にフンボルトとガウスの対話は,対話ではありながら対話になっていない,対話になっていないようでも対話になっている不思議な空間を作り出しています。
ぜひご自分でお楽しみください!
日本語訳も発売されました。こちらで楽しむのもいいかな?
ダニエル・ケールマン『世界の測量〜ガウスとフンボルトの物語』瀬川祐司訳,三修社,2008年
では,auf Wiedersehen!
NHK外国語講座 テレビでドイツ語は
教育テレビ
放送:(木) 午前0:00~0:25(水曜深夜)
再放送:(翌週月) 午前6:00~6:25
大好評放映中です。
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