私は時々自転車に乗って通勤する。最短距離で9キロくらいであろうか、ルートは数え切れない。その日の気分によっていろいろな組み合わせで走る。静かな道を走りたいときは川沿いの緑道を、賑やかな雰囲気を求めるときは商店街を通り抜ける道を選ぶ。コーヒーを飲みながら一服できる店も10以上はあろうか。日差しの強い夏には、午前中早めに家を出て、鉄道高架線の陰にそって走ってくる。
快適な道もあるのだが、いつもそうだとは言えない。自転車も車両にあたるので、本来は歩道を走ってはいけない。特に近年自転車マナーが注目されてきているので、むやみに歩道は走れない。しかし交通量の激しい道で車と併走するのは緊張する。急いでいるときには国道を通ることも多いが、大型トラックが通りすぎるときには、何となく体が引き寄せられる気がする。自転車のための専用道路の整備が遅れている。快適で安全な状況というには程遠いのが日本の現状であろう。
世界で一番自転車にやさしい国、自転車専用道路が整備されている国はオランダである。だいぶ前であるが、先進国首脳会議(サミット)が開かれた際、各国首脳が自転車に乗って会場を移動するという、いかにもオランダらしい演出があった。たしかそのときのドイツ首相はヘルムート・コールだったと思うが、あの巨漢のコールも自転車移動したのだったか。想像するだけも微笑ましい光景である。ちなみに第二次世界大戦後、ドイツ人がオランダを訪れるとオランダ人からよく言われたことに、「俺の自転車を返せ!」という言葉だったという。これは、ナチスによるオランダ占領中にドイツ人がオランダ人から自転車を奪い取っていったことによる。これもオランダの自転車大国ぶりを示すエピソードであろう。
オランダほどではないが、ドイツもヨーロッパのなかでも自転車環境が整備されている国に挙げられよう。初めてドイツに行ったとき、歩道と思ってフラフラ歩いていたところ、自転車に乗っている人から叱られた。その時、歩行者が通ってはいけない自転車専用道路というものがあるということを始めて知った。
ドイツで自転車に一番やさしい街はミュンスターという街である。地元の人たちは、「自転車の首都」といって誇りにしている。確かに街には自転車専用道路が整備されている。ただ整備されすぎているために、自転車利用にあたってのルールが複雑で、標識などにも習熟しなければならない。自転車運転講習のパンフレットがミュンスター市のHPからダウンロードできるが、自動車教習所の教科書と見間違うような中身の濃いものである。ところで、ドイツの自転車はペダルを逆に回すとブレーキがかかる。これは日本にはない。また「ママチャリ」も日本にしかない。ドイツで自転車に乗るときは、まずは自転車自体に乗れるようになった上で、交通ルーツに習熟しなければならない。自転車にやさしい社会も最初はそれなりに大変そうである。
次回は、ドイツでの自転車専用道路の整備に向けてのお話を書きます。
K. O
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