2017年10月11日水曜日

【獨協インターナショナル・フォーラム1】多くの顔をもつルター Luther mit vielen Gesichten




①          ②


③
  

④          ⑤


みなさんは上に並んだ5枚の図版の中で、どれがルターの肖像画だと思いますか?
 実は上の5枚の図版は、いずれも一人の人物、すなわちマルティン・ルターの肖像画なのです!
 図1から順に見て行くことにしましょう。

 図1は、当時ヴィッテンベルクのザクセン選帝候フリードリヒの宮廷画家であったルーカス・クラーナハ(父)(1472-1553年)が、1520年に銅版画で制作したルターです。力強く張った額の下に鋭い目が光っており、ルターはここでアウグスティヌス会修道士の衣服とトンスラ(修道士の髪型)の姿で、四分の三正面観で描かれています。

 図2は同じ画家が翌年1521年に銅版画で描いたルターです。ここでは大きな博士帽を被った僧侶として描かれており、真横から見た肖像なので、最初の銅版画とは、かなり印象が違います。

 図3は、クラーナハが更に翌年1522年に今度は木版画で描いた騎士の姿のルター、通称「ユンカー・イェルクとしてのルター」です。1517年に「95か条の提題」を出したルターには、1521年に神聖ローマ皇帝カール5世が開催したヴォルムス帝国議会以降、その身に危険が迫っていました。そこでルターは再び頭髪を伸ばし、鬚をはやした騎士に「変装」して、ザクセン選帝候フリードリヒ賢候の持ち城であるヴァルトブルク城に逃れたのです。そこでルターは聖書のドイツ語訳に専念したのでした。

 図4はルターの肖像画としては、最もよく知られた1528年のクラーナハの油彩画です。現在でもドイツのプロテスタントの幼稚園にはこのルターの肖像を掛けることが多いようです。この肖像画は夫婦のダブルポートレートで、このルターの肖像画が左に、右には妻のカタリーナ・ルターの肖像画が配されます。ルターは初めて聖職者でありながら妻帯した人でした。

 そして図5は「七つの頭のルター」です。ルターは多彩な人で、学問、音楽にも秀でていましたが、その能力が、カトリック側の批判者たちには七つの顔を持つ怪物に映ったのでした。これは1520年に描かれたヨハネス・コッホロイスの著作『マルティン・ルターの七つの頭』の表紙につけられた、ハンス・ブロザーメルによる木版画です。

 それにしてもなぜこのように沢山のルターの肖像画は描かれたのでしょうか。個人の顔を描く「肖像画(Portrait)」というジャンルが絵画に登場したのは14世紀の後半でした。初めは位の高い王侯貴族の姿を後世に残す目的で描かれ、15世紀に入ってようやく、高位の廷臣、豊かな市民も肖像画を描いてもらえるようになったのです。ルターは坑夫の息子として生まれ、後に僧侶となり、間もなく若くて情熱的な神学者として、新設のヴィッテンベルク大学の人気教授となりましたが、本来このように沢山の肖像画が描かれる身分の人ではありませんでした。では、なぜこのようにルターの肖像画が多数制作され、広まっていったのか。その背景、ならびに意図は何だったのか。この続きはフォーラムでお話したいと思います。

(青山愛香 教授)


ルターと妻カタリーナ・フォン・ボーラ
(Lucas Cranach d. Ä., 1529)

【学生記事】ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン 「交響曲第5番」







 今回はベートーヴェンの交響曲のことについて書いてみます。

 ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)は1770年12月、ドイツのボンで生まれました。ベートーヴェン一家はケルン選帝侯の宮廷歌手を務めていました。父親も音楽家で歌手でしたが、酒好きで歌手としての活動はうまくいかず、生活を支えてくれていた祖父が亡くなったことで生活が困窮します。当時モーツァルトが話題になっていたので、ベートーヴェンの父親は息子を音楽教育しようと考えました。かなり厳しいスパルタ教育をうけ、一時は音楽が嫌いになるほど鍛え抜かたようです。しかし、このスパルタ教育があったからベートーヴェンは偉大になれたのかもしれませんね!

さて、これは余談なのですが、今回題名に「交響曲第5番」といれたのには理由があります。ベートーヴェンの作品はどれも音楽史において重要なもので、ベートーヴェンの魅力を伝え切ろうとするといろんな曲を紹介することになります。全てをここで紹介するのは難しいですし、ベートーヴェンの魅力を完全にお伝えするのは私には無理なので、一番有名な5番を選んでみました。 日本では一般的に「運命」のタイトルで有名な曲ですね。




 貼ったリンクはヘルベルト・ブロムシュテットという指揮者のベートーヴェン第5番です。
 冒頭部分を知らない人はほとんどいないと思います。誰もが知るほど有名な「ジャジャジャジャーン」というやつですね。これを考えついたのがそもそもすごいな、と私は感じます。実はこのフレーズは、音がなる前に休符を含んでいます。「(ん)ジャジャジャジャーン」と表現したらわかりやすいでしょうか。
 どの楽章もとても魅力的ですが、私が個人的に気に入っている部分があるので、それを紹介したいと思います。先程貼ったリンクの動画の26:00頃から最終楽章に入ります。聞いていただけるとわかりやすいと思いますが、静かな部分はまだ第3楽章です。盛り上がっていき、頂点に達したところからが最終楽章です。この流れだけで鳥肌ものなのですが、この後のメロディーや流れも本当に完成されているなあ、と感じます。
 35:34あたりから最後まで突っ走る部分も、個人的に好きな部分です。この偉大な交響曲5番の締めにふさわしい、勢いと迫力のある素晴らしい終わり方です。

 これをいうと「個人的オススメポイント」の意味が薄れそうですが、交響曲は最初から最後まで聴き通すとそのすごさが分かるものなのではないか、と個人的に思っています。もちろん部分的に聞いても美しいものは美しいのですが、その交響曲全体の形が見えた時にさらに説得力を増します。1時間もの曲を落ち着いて聴く時間を得るのは難しいかもしれませんが、鳥肌が立つ、あるいは武者震いがするほどの感動ってなかなか得られるものではありません。これまで紹介してきた作曲家でも、あるいはまだ紹介していない作曲家でも、何か触れてみると意外とハマったりするかもしれませんよ!


Schöpfung