2017年7月18日火曜日

【学生記事】「善き人のためのソナタ(Das Leben der Anderen)」

学生記者のヨシタカです。今回はドイツ映画について書いてみようと思います。紹介する映画は2006年に公開されたドイツ映画「善き人のためのソナタ」(Das Leben der anderen)です。



ちなみに邦題は「善き人のためのソナタ」ですが、オリジナルのタイトルはDas Leben der anderen、「他の人の人生」です。「善き人のためのソナタ」というフレーズは映画の終わりに出てきます。下はWikipediaから取った映画のあらすじです。

「1984年の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉は国家に忠誠を誓っていた。ある日彼は、反体制の疑いのある劇作家ドライマンとその同棲相手の舞台女優クリスタを監視するよう命じられる。さっそくドライマンのアパートには盗聴器が仕掛けられ、ヴィースラーは徹底した監視を開始する。しかし、聴こえてくる彼らの世界にヴィースラーは次第に共鳴していく。そして、ドライマンが弾いたピアノソナタを耳にした時、ヴィースラーの心は激しく揺さぶられる。」

この映画に出てくる「国家保安省」通称「シュタージ」は東ドイツにおける監視社会を築き上げた張本人です。シュタージはナチスのゲシュタポやソ連のKGBにも匹敵する規模だったとか。映画の中でも監視対象の人物が不在のときに勝手に部屋に入り込みマイクを仕掛け、一日中屋根裏部屋で盗聴しているシーンがあります。当時の東ドイツの監視体制の実態が事細かく描かれている映画でもあります。
また、この映画の主人公ヴィースラー大尉を演じているのはウルリッヒ・ミューエという東ドイツ出身の俳優です。若いころ兵役でベルリンの壁の警備兵をしており、彼自身もシュタージの監視下に置かれていたようです。この体験もこの映画における彼の役作りに影響しているのかもしれませんね。

映画の冒頭のシーンが印象的だったので、以下ドイツ語のセリフと和訳、さらに注釈を加えてみました。冒頭は主人公ヴィースラー大尉が囚人を尋問する場面と、ヴィースラーがその尋問を録音したカセットテープで生徒に尋問の仕方を説明している場面の入れ替わりで構成されています。下のスクリプトだけでは何をやっているかわかりづらいと思うので、ここの動画を見ることをお勧めします。
以下、主人公のヴィースラー大尉はWiesler、尋問される囚人はHäftlingと書きます。Wachmannは最初に出てくる警備員で、Studentは講義のシーンで出てくる大学生です。セリフの途中途中に数字がふってありますが、これは下の注釈に対応しています。良かったらそちらも読んでみてください。




NOVEMBER 1984 BERLIN-HOHENSCHÖNHAUSEN 1
「1984年9月 ベルリン・ホーエンシェーンハウゼン」

(警備員が囚人を連れて廊下を歩く)
Wachmann:Stehen bleiben! Blick nach unten! (Alarm) Weitergehen!
「止まれ!下を見ろ!(アラームが鳴り終わった後) 進め!」

UNTERSUCHUNGSGEFÄNGNIS DES MINISTERIUMS FÜR STAATSSICHERHEIT2
「国家保安省 取り調べ留置所」

(尋問室の手前)
Wachmann:Anrede Herr Hauptmann3!
「大尉殿!」
Wiesler:Herein! Setzen Sie sich. Hände unter die Schenkel, Flächen nach unten. Was haben Sie uns zu erzählen?
「入れ! 座れ。手を腿の下に、手のひらは下に向けて。何か話すことはあるかね?」
Häftling:Ich hab´4 nichts getan, ich weiß nichts.
「私は何もしていません、何も知りません。」
Wiesler:Sie haben nichts getan, wissen nichts. Sie glauben also, dass wir unbescholtene Bürger einfach so einsperren lassen ... aus einer Laune heraus5.
「何もしていないし、何も知らない。ということは我々が潔白な市民をなんとなく拘束するとでも思っているのだな…それも単なる気まぐれから。」
Häftling:Nein ich…
「いや、私は…」
Wiesler:Wenn Sie unserem humanistischen System so etwas zutrauen, dann hätten wir schon Recht, Sie zu verhaften, wenn sonst gar nichts wäre. Wir wollen Ihrem Gedächtnis ein wenig nachhelfen, Häftling 227 6. Ihr Freund und Nachbar, ein gewisser Pirmasens Dieter hat am 28. September Republikflucht begangen. Wir haben Grund zu der Annahme, dass ihm geholfen wurde.
「もし我らの人道的なこのシステムを少しでも信頼するのであれば、あなたを逮捕するのも当然の権利だ。我々はあなたが思い出す手助けをしたい、囚人227番。あなたの近所の友人、ピルマゼンス・ディーター氏が9月28日、西側へ逃亡した。彼に協力者がいたことぐらい私たちも知っている。」
Häftling:Ich weiß darüber gar nichts. Er hat mir nicht mal7 gesagt, dass er rüber8 wollte. Ich hab's 9 erst im Betrieb erfahren.
「何も知りません。彼は西側に行きたいなんて一言も言いませんでした。逃げたことも工場で始めて聞きました。」
Wiesler:Beschreiben Sie mir doch bitte einmal, was Sie an diesem 28. September gemacht haben.
「この9月28日にあなたが何をしていたか、詳しく話せ。」
Häftling:Das hab' ich doch schon zu Protokoll gegeben.
「既に調書にあるはずです。」
Wiesler:Bitte noch einmal.
「もう一度話したまえ。」
Häftling:Ich war mit meinen Kindern im Treptower Park spazieren. Dort traf ich meinen alten Schulfreund Max Kirchner. Wir gingen zusammen zu ihm nach Hause und haben bis in die späten Abendstunden Musik gehört. Er hat ein Telefon, Sie können ihn anrufen. Er wird Ihnen das alles bestätigen. Ich kann Ihnen gern die Nummer geben.
「私は子供達と公園を散歩していました。そこで友人のマックス・キルヒナーに会いました。それから私たちは彼の家で遅くまで音楽を聴いていました。彼は電話を持っています。彼がすべて証言してくれるでしょう。電話番号をお教えしても構いません。」

(ここから生徒が10数名ほど座っている講義室 教壇にはヴィースラーがいる)
STASI HOCHSCHULE POTSDAM-EICHE
国家保安省単科大学 ポツダム・アイへ

Wiesler:Die Gegner unseres Staates sind arrogant. Merken Sie sich das. Wir müssen Geduld haben mit ihnen. Etwa 40 Stunden Geduld. Spulen wir ein wenig vor.
「我々の国家の敵は傲慢だ。覚えておくように。奴らに対しては忍耐が無ければならない。40時間もの忍耐が。(カセットテープの再生を押して)先に進もう。」

(尋問室 既に外は暗くなっている)
Häftling:Ich möchte schlafen... Bitte lassen Sie mich schlafen...
「眠りたい…どうか眠らせてください…」
Wiesler:Die Hände unter die Schenkel. Schildern Sie mir noch einmal, wie Sie den 28. September verbracht haben.
「手を腿の下に置け。9月28日あなたがどう過ごしていたか、話したまえ。」
Häftling:Bitte...ich will nur eine Stunde...nur ein bisschen...schlafen.
「1時間だけでも…すこしだけ…眠らせてください…」
Wiesler:Sagen Sie mir noch einmal, was Sie an diesem Tag gemacht haben.
「この日何をしていたか、もう一度言え。」
Häftling:(weint)
(囚人が泣く)

(講義室)
Student:Warum müssen Sie ihn so lange wachhalten? Ich meine...das ist doch unmenschlich.
「なぜ彼をそこまで長く起こしたままにする必要があるのです?これは…非人道的です。」
Wiesler:Ein unschuldiger Häftling wird mit jeder Stunde, die man ihn länger dabehält, zorniger, wegen der Ungerechtigkeit, die ihm widerfährt. Er schreit...und tobt. Ein Schuldiger wird mit den Stunden ruhiger... und schweigt...oder weint. Er weiß, dass er zurecht dort sitzt. Wenn Sie wissen wollen, ob jemand schuldig ist, oder unschuldig, gibt es kein besseres Mittel als ihn zu befragen, bis er nicht mehr kann.
「罪のない人間は長く拘束するほどイライラしてくる。自分に降りかかったこの不当な仕打ちにだ。ついには叫び、大声で怒り出す。罪のある人間は次第におとなしくなり、黙るか…泣き出す。彼自身そこに座っている理由を知っているからだ。誰かが有罪か無罪かを知りたいならば、答えられなくなるまで尋問する以外に良い方法はない。」

(尋問室)
Häftling:…Schulfreund Max Kirchner. Wir sind zu ihm nach Hause gegangen...und haben Musik gehört bis in die späten Abendstunden. Er hat ein Telefon, Sie können ihn anrufen. Er wird das alles bestätigen.
「(疲れた様子で)…昔の友人マックス・キルヒナー。僕らは一緒に彼の家へ行きました…そして夜まで音楽を聴いたのです。彼の家には電話があります。電話を掛けられます。彼がすべて証言してくれるでしょう。」

(講義室)
Wiesler:Fällt Ihnen etwas auf an seiner Aussage?
「彼の発言に関して、何か気付いたことはあるかね?」
Student:Er sagt das gleiche wie am Anfang.
「彼ははじめと同じこと言っています。」
Wiesler:Er sagt dasselbe wie am Anfang. Wort für Wort 10. Wer die Wahrheit sagt, kann beliebig umformulieren. Und tut das auch. Ein Lügner hat sich genaue Sätze zurechtgelegt, auf die er bei großer Anspannung zurückfällt.
「彼ははじめと全く同じことを言っている。一字一句違わずに。本当のことを言う者は、好きに文を言い換えられる。そして実際にそうする。嘘つきというのは、極度の緊張状態にあっても思い返せるように最初から何を言うか用意している。」
Wiesler:227 lügt. Wir haben zwei wichtige Indizien und können die Intensität erhöhen.
「囚人227番は嘘をついている。我々はこれら2つのヒントとなるもの (囚人が泣いていることと同じ発言を繰り返していること) をつかんでいる。よってここでさらに圧力を加えてやるといい。」

(尋問室)
Wiesler:Wenn Sie uns den Namen des Fluchthelfers nicht nennen, muss ich noch heute Nacht Ihre Frau verhaften lassen. Jana und Nadja kommen in eine staatliche Erziehungsanstalt. Wollen Sie das? Wie heißt der Fluchthelfer? Wer war´s?
「協力者の名前を言わないつもりなら、今夜にでも貴方の奥さんを逮捕しなければいけない。ヤナとナディア(娘の名前)も孤児院に通うことになる。これでもいいか?さあ協力者の名前を言え。誰だ?」
Häftling:Gläske.
「グレスケ。」
Wiesler:Nochmal, deutlicher!
「もう一度、はっきりと!」
Häftling:Gläske, Werner Gläske.
「グレスケ。ヴェアナー・グレスケ。」
Wiesler:Werner...Gläske.
「ヴェアナー・グレスケ。」

(講義室)
Wiesler:Ruhe. Ruhe! Hören Sie. Kann mir jemand sagen, was das ist? Die Geruchskonserve für die Hunde. Sie ist bei jedem Gespräch mit Untersuchungshäftlingen abzunehmen und nie zu vergessen. Bei Verhören arbeiten Sie mit Feinden des Sozialismus. Vergessen Sie das nie. Guten Tag 11.
「静かに。静かに!聞け。(カセットテープの音を聞かせて)これは何の音かわかるものはいるか?犬に使う囚人の匂いの標本をとっているのだ。毎回尋問のたびに取り、決して忘れないように。尋問において君たちは社会主義の敵を相手にするのだ。これを絶対に忘れないこと。今日はこれで終わる。」




というわけで、解説を加えるとえらい長いものになってしまいました。セリフの訳も自分で何とか訳してみたものなので、どこか変なところもあるかもしれません。そこはどうかお許しください。
とりあえず見ての通り、冒頭は将来のシュタージ捜査官の卵たちに囚人の尋問方法を教えているシーンです。そしてその尋問方法というのが「容疑者を40時間ほど同じ質問で尋問し続け、その反応を見る」というもの。非常に残酷な方法ですが、いわゆる賢い方法でもあると思いました。

映画の内容に関してはあまり多くは語れませんでしたが、どこかネガティブな要素の多いドイツ映画(私の勝手な印象です)の中でも、これは単純に楽しめる映画であると思います。ぜひ一度ご覧になられてみてはいかがでしょうか。

ヨシタカ



※注

1 Berlin-Hohenschönhausen
GoogleでHohenschönhausen と調べてみたら、博物館のホームページが出てきました。どうやらベルリンのホーエンシェーンハウゼンにはシュタージの刑務所が実際にあったそうで、現在は博物館として公開されているようです。http://www.stiftung-hsh.de/
2 Ministerium für Staatsicherheit
悪名高き東ドイツの国家保安省の別名「シュタージ」はStaatssicherheit(シュターツジッヒャーハイト)の省略された形です。
3 Anrede Herr Hauptmann!
  大尉殿!と訳しましたが、本来の意味は少し違います。
Anrede とは相手への話しかけ方、つまりSieやDuなどのことで、Anrede Herr Hauptmann というのは “Die Anrede ist Herr Hauptmann!“ が口語的に略された形です。ここではこの囚人に対して、これから尋問する人、つまりヴィースラー大尉をHerr Hauptmannと呼ぶように命令しています。「これからお前を尋問する人のことはHerr Hauptmannと呼べ!」という事ですかね。
※Herr Hauptmann
軍隊でいう大尉のこと。ここでは苗字などではありません。Herrは男性の名字だけでなく職務に付けられることもあります。ちなみに少尉はLeutnant、中尉はOberleutnantと言います。
4 hab´ [hap] = habe 
この例に限らず話し言葉において動詞の一人称の最後のeはしばしば省略されて発音されます。例えばmache→mach´などです。文章上においてこの省略は大抵右上のコンマが打たれることで示されています。

5 aus einer Laune heraus 

Laune は「機嫌」で、aus einer Laune heraus で「なんとなく、気まぐれで」といった意味になります。
6 227 
この場面を見ると、227は「ツヴォー、ツヴォー、ズィーベン」と発音されています。これは電話越しで話す際など、zwei(ツヴァイ)とdrei(ドライ)との混同を避けるためによく使われる表現です。

7 rüber = hinüber 

「乗り越えて、通り越して」の意味。ここではベルリンの壁を超える、つまり「西ドイツに逃亡する」ということです。ちなみにrüberというのはherüberの省略形のように思われますが、実はhinüberの口語表現における省略形でもあります。hin-とher-では方向が真逆ですが、口語的表現だと形が一緒になってしまうのですね。これはrausやrauf、 reinなどでも同じです。
8 nicht mal = nicht einmal 
einmal はよくmal と省略されます。nicht einmal は「一度も~ない」という意味です。
9 hab´s = habe es 
esは口語表現においてしばしば省略された形で発音されます。例えばwenn es
→wenn’s などです。
10 Wort für Wort 
「1語1語」。ここでのfür は連続性を示しています。例えばTag für Tag で「毎日」という意味です。
11 Guten Tag 
「こんにちは」?あれ?と思った方もいらっしゃるかもしれません。見ての通り講義の終わりで言われることもあるようです。ドイツ人の友人に聞くと、これは少し古臭い表現で、これを言う人はどこか厳しい印象を与えるようです。


2017年7月14日金曜日

ドイツ人学生の<実験>に協力してくれる人を募集しています

ドイツ人学生の<実験>に協力してくれる人、募集中!!

今週から1ヶ月間、ドイツのヒルデスハイム大学から、2名の女子学生カタリーナとラウラが来日しています。
彼女たちは、ドイツ連邦教育・研究省拠出の海外研究奨学金で来日し、ヒルデスハイム大学出身で本学教員である秋野有紀准教授のゼミに受け入れています。

すでに授業などで紹介された学生さんたちもいると思いますが、彼女たちの専門は心理学で、文字認識の日独比較の調査をしています。

彼女たちは日本で、ドイツ人よりも縦に文字を読むことに慣れている(はずの)日本人は、はたして縦線、横線をドイツ人と違った風に認識するのか?という実験をしています。

月曜日から金曜日、たいてい10時から18時頃まで、天野貞祐記念館(A棟)3階の「ドイチェ・エッケ」にいます。
(※ 秋野ゼミなど、いくつかの授業に参加している時間帯には一時的にいません)

実験(Experiment)に協力してくれる人
ドイツ語で話してみたい人
一緒に遊びに行きたい人

は、いつでも気軽に声をかけて下さいね。

実験は、画面に表示される矢印を見て、その方向のキーを押す、という簡単なもので、ドイツ語や英語で何かを読む必要はありません。なので1年生でも大丈夫!

気さくで明るい2人が、みなさんをお待ちしています♪
勇気を出してHallo!と言ってみてくださいね。

2017年7月10日月曜日

【学生記事】全国高校生ドイツ語スピーチコンテスト




今回はドイツ語学科主催の「全国高校生ドイツ語スピーチコンテスト」について紹介したいと思います。

 みなさんはこのイベント、ご存知ですか?毎年、7月末のオープンキャンパスと同日に開催されるドイツ語のスピーチコンテストで、今年で19回目を迎えます。
 朗読部門、対話部門、フリースピーチ部門の3部が開催されます。朗読、対話部門ではあらかじめ指定されたテキストを暗唱、フリースピーチ部門ではテキストを自ら作成し、録音した音声を獨協大学に送って応募します。ドイツ語学科の先生方による、厳しい審査を通った応募者が、本選となるこのコンテストに出られるのです。本選出場者には外国語学部ドイツ語学科の公募制推薦入試出願資格が授与される、ドイツ語を学習している高校生にとっては大きなチャンス!!!
 コンテスト終了後にはアトラクションが用意されています。今年のアトラクションテーマは「ドイツ音楽のABC -名曲ばかりの1時間-」。スピーチだけでなくこういったドイツの文化に触れることもできるので内容盛りだくさんです!

実は私も高校生の時に2回応募したのですが、発音が下手くそすぎて予選すらも通ることができませんでした。予選は落ちても、発音や表現力など様々な項目を得点化して獨協大学の先生方からのコメント付きの講評が送付されます。私はその講評用紙とにらめっこしたのをよく覚えています。これで自分の発音に何が足りないのかが明確になったので、勉強の励みになりました。
今年は、高校生の時に憧れていたこのスピーチコンテストに学生スタッフとして司会を担当することになったので、どんなスピーチが聞けるのか楽しみです。

一般の方も、観覧可能なのでドイツ語学科の学生さんや、ドイツ語に興味のある方、受験生の方など、どなたでもぜひ足を運んでみてください。

日時:2017年7月30日(日) 12:00~
場所:獨協大学 天野貞祐記念館 3階大講堂


小峯 萌花

2017年7月4日火曜日

【学生記事】グスタフ・マーラー


グスタフ・マーラー (Gustav Mahler, 1860-1911)

 
 今回はグスタフ・マーラーについて紹介していきます。

 グスタフ・マーラーはオーストリア帝国のカリシュト村というところで次男として生まれました。現在のチェコのカリシュチェというところです。
 兄弟は14人いたそうですが、半数の7人が病死したそうです。この時兄もなくなったため、実質長男として育てられたようです。

 オーストリア・ハンガリー帝国のユダヤ人に関する法律の改正により、マーラー一家はイーグラウに引っ越しました。引っ越した先でグスタフがピアノに没頭したことで、父ベルンハルトはグスタフが音楽家に向いていることを確信しました。9歳の時にギムナジウムに入学、そして15歳の時にウィーン楽友協会音楽院(現在のウィーン国立音楽大学)に入学し音楽を本格的に学びました。ウィーン大学でブルックナーの講義を受けて、ここからマーラーとブルックナーは親交を深めていきます。18歳で卒業し、23歳でカッセル王立劇場の楽長、24歳でプラハのドイツ劇場の学長に就任しています。

 さて、グスタフ・マーラーの交響曲を紹介していきます。
 中学校の音楽の教科書には、交響曲第1番「巨人」が冒頭部分だけちょっと載っていましたが、個人的にオススメしたいのが交響曲第9番です。
 マーラーは交響曲第8番を完成させたのち、次の交響曲に9番と名付けるのを嫌いました。ベートーヴェンや親交の深かったブルックナーが、交響曲第9番を完成させたのちに死んでいるのを意識したためです。マーラーは小さい頃から死に対して恐怖を抱いていたようで、結局9番になるはずだった曲は大地の歌と名付けられ、10番目の交響曲が9番と名付けられることになりました。このような経緯があるためか、交響曲第9番からは全体的に死の恐怖や、狂気を感じます。

GUSTAV MAHLER SYMPHONY NR 9 Bernstein

再生できない場合はこちら:
(https://www.youtube.com/watch?v=wWxX-kf-2MI)

 53分50秒からがオススメの聴きどころですね。この部分は第3楽章の終盤で、静かな雰囲気から3楽章終了まで一気に突っ走ります。不安を煽るような速さは、死の恐怖で狂っているのを感じさせます。特に最後の部分(56分5秒あたりから)でヴァイオリンが素早く下降するラインを弾いているのですが、ここが一番狂気を感じるなと思っています。

 この3楽章の後の最終楽章は、打って変わって終始静かな雰囲気です。綺麗なメロディーでうるさくならないので、寝る前にいつも聴いているくらいです。この楽章の最後の小節にはersterbend(死に絶えるように)と記されており、この第9番のテーマが「死」であることが分かります。

 他にも交響曲第6番でハンマーが使われたり、なかなか個性的な交響曲がたくさんあると思います。興味があれば聴いてみてはいかがでしょうか?

Schöpfung